東芝、前代未聞の「再任否決」 逃げの経産省と腹を括らない政治家の罪
根本問題は原子力政策
前出のジャーナリストも東芝と経産省の行き過ぎた関係を指摘する。
「車谷社長は三井住友銀行時代に政府との関係を築き、経産省と共に東日本大震災で事故を起こした東京電力を破綻処理せずに国が支える道筋を作った人です。その車谷氏が東芝の社長に就任して以来、経産省と東芝の二人三脚は強まっていました。報告書については、官邸、経産省、水野氏ともども、内容を否定していますが、まさに政官業の癒着が露呈したという声が出るのも当然でしょう」
今後、東芝はどうなるのか。
「まだひと悶着あるはずです。永山氏が再任を拒否され、本来は社外取締役が務めるべき議長に、社内出身の綱川智社長兼CEO(最高経営責任者)が就任しました。彼は議事運営の主導権を握ろうとするでしょう。しかし、注目すべきは次のトップや取締役候補などを決める指名委員会の委員5人のうち過半数の3人が、投資ファンドと東芝が合意した外国籍の取締役が占め、委員長にも投資ファンド出身のレイモンド・ゼイジ氏が就いたことです。今後、投資ファンド側の意向を汲み、人事などを通じて東芝の運営が行われることになりそうです」
さて、追い詰められた経産省はどんな手を打ってくるのか。前出の経産省幹部は言う。
「日本の原子力政策をどうするのか、政治も役所も決められないことに根本問題があります。原子力技術を国として守りたいならば、東芝という会社を守るのではなく、原子力や原発事業を切り離して国営化するなど抜本的な見直し策が必要ではないでしょうか。東日本大震災の東電福島第一原発事故以来、世論を恐れて思考停止になって何も決められない自民党の政治家に最大の責任があると思いますね」
独立した弁護士による報告書が出ても、梶山大臣は「根拠が必ずしも明らかでない」などとその内容を疑問視する発言をしている。一方で、事実関係の再調査は否定するなど、「逃げ」の姿勢に徹しているのも事実だ。政治家が腹を括らない中で、東芝とこの国の原子力事業はどこへ向かうのか。
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