70歳男性がロシアによるスパイ行為で逮捕 犯罪に手を染めた“哀しい”背景とは

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 指定された場所で、すれ違いざまに資料と報酬を交換する――。

 スパイ映画さながらの“フラッシュコンタクト”でロシア側に情報を流し続けていたのは、御年70の老人であった。

 全国紙記者が解説する。

「今月10日、神奈川県警が、県内在住の宮坂和雄容疑者を電子計算機使用詐欺の容疑で逮捕したと発表。一昨年、在日ロシア通商代表部の男性職員に求められ、データベース提供会社から米国の軍事技術文献などを不正に入手、職員に提供していた疑いがもたれています」

 宮坂氏が手渡していたのは、無人戦車やレーダーを用いた軍事偵察に関する論文など。しかも、30年にもわたってロシア側に情報を提供し、1千万円以上の報酬を得てきたというから驚く。

 だが、難解な技術文献を次々と見繕い、横流ししてきたこの老スパイの人生は、実に悲哀に満ちていた。

 宮坂氏の知人によれば、

「彼は都内の私立大学機械工学科の出身。大学在学中から、技術論文を収集し、製造業者や研究機関に提供する調査会社でアルバイトをしていました」

 ネットが発達する前は、こうした“技術調査会社”が重宝されたといい、宮坂氏も20代で技術文献を扱う会社を起業している。

 当時を知る関係者いわく、

「順調に業績を伸ばし、平成に入ってしばらくすると、従業員30名を擁する、年商3億円ほどの企業に。取引先には日立製作所や三菱重工など大手企業の名前もありました。真面目な性格で酒も飲まない。付き合いでキャバクラに行っても、一人だけトマトジュースを飲んでいたのが印象的です」

 ところが、転落を招いたのも、性格ゆえだった。

「彼は一言でいえば“つけ込まれやすい性格”なんです。会社が成長するにつれ、周囲からさまざまな事業を持ち掛けられるようになり、甘い言葉に乗せられて事業を拡大してしまった」(同)

 会社の業績はみるみる悪化。不渡りを出し、消費税を納めることもままならない状況になったという。

「結局、2003年に会社は破産。差し押さえられた自宅は競売にかけられ、奥さんの弟に買い取ってもらって何とか難を逃れた。彼が生活のためにロシアのスパイを続けていたのだとしたら……つくづくやりきれませんよ」(同)

 ロシアにとって、またとない適役だったに違いない。

週刊新潮 2021年6月24日号掲載

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