「コロナが明けたら」と言う人は切った方がいい その気がないなら「行かない」と言ってほしい(中川淳一郎)

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「コロナが落ち着いたら…」「コロナが明けたら…」「コロナが収束したら…」の三つの言葉がすっかり定着しましたね。その後に続くのは「飲みに行きましょう」や「ぜひパーッとやりましょう」などです。これらの言葉を「体の良い断りの言葉」として巧みに使用する人もいれば、本気でコロナを怖がってこの言葉を使う人もいます。

 最近ツイッターユーザーが指摘していたのが、これらのフレーズは「行けたら行く」と同じようなものである、ということです。確かにそうですね。「行けたら行く」というのは、「行きたくないと言うと角が立つから使う言葉」で、実質的には「行きません」という断りの言葉です。

 以前、私が飲み会に誘った際の、この言葉への違和感についてコラムで書きました。「お前の席まで予約していたのに当日来ないヤツが多過ぎるので、『行けたら行く』と言うヤツに対しては『じゃあ来るな』と言い、金輪際そいつを誘わなくなった」という趣旨の原稿です。

 ネットのコメントを見ると、私に対して「はぁ…、なんで空気が読めないの? 『察してくださいよ』という意味です」といった声に加え、「関西では当たり前」という書き込みが案外多数ありました。

 私はそんな面倒くさいコミュニケーションなんてしたくないですし、来たくない人と一緒に同じ場にいたくもない。「行かないです」と直接的に断る文化がさっさと日本に定着してほしいです。だから私は、「じゃあ来ないでいいです」と明確に言い切るのです。

 飲み会なんてもんは、誘う側の人間としては同じ部署だから一応誘ったり、普段から何らかの接点がある人間には全員に声を掛けるものなんですよ。だから幹事からすれば来ても来なくてもどちらでもいい。後で「なんで私を誘わなかったんですか!」と言われるのが面倒くさいから声を掛けているだけなのに、「行けたら行く」って何なんだよ。

 何らかの会合の誘いが来たら「行く」「行かない」の2択しかない。百歩譲って「行くつもりですが、その日、ヤバいトラブルがあったら行けません」までは許せます。それを、「私は行きたくない気持ちを『行けたら行く』という言葉に託したのに、それを理解しないってバカ?」というゴーマンさはまったく許せませんね。

 今、「コロナが落ち着いたら…」と言う知り合いがいる方、そいつ、多分切ったほうがいいですよ。そいつは今後の人生でどうでもいいヤツです。

 さて、ご存じのように私は東京を脱出して佐賀県唐津市に引っ越しましたが、とにかく唐津に来る方々が無茶苦茶多いんですよ! 5月は5組、6月は6組、7月は7組! 12月は12組になるのか! という勢いですが、この人たちは「コロナが落ち着いたら…」なんて一切言わず「中川さんと会いたいので唐津行く!」「福岡出張のついでに唐津行く!」と言ってくれる。週刊新潮で担当のF氏も実際に来てくれました。ありがとう。

 しかし思うのは、「行けたら行く」「コロナが落ち着いたら」的言葉を使う人は、なぜ「私は飲みになんて行きたくないんで、もう誘わないでね!」とハッキリ言ってくれないんですかねぇ。あなたのその無駄な配慮がより他人に迷惑をかけるのです!

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2021年6月24日号掲載

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