ステージ4を宣告された公務員の障害者が選んだ道 自分の営みを自撮りする映画が上映
生まれつきの四肢軟骨無形成症
スキルス性胃がんで、ステージ4を宣告された相模原市役所に勤務する障害者が選んだ道とは。6月25日から、東京都・吉祥寺のミニシアター「アップリンク吉祥寺」で封切られる異色のドキュメンタリー映画「愛について語るときにイケダの語ること」に込められたメッセージを製作者が語る。
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画面から放送禁止用語がかぶせ音なく流れ、裸の男女が互いを慰め合う様子が映し出される。いわゆる普通のセクシービデオと違うのは、性行為のシーンで登場する女性の全身に薄いモザイクがかけられていること。そして、相手の男性の手足が普通の人より“短い”こと――。
6月25日(金)、東京都武蔵野市吉祥寺のミニシアター「アップリンク吉祥寺」で封切られる「愛について語るときにイケダの語ること」は、まごうことなき“問題作”である。
企画・監督・撮影・出演は、池田英彦氏。生まれつき、四肢軟骨無形成症という障害を抱え、身長は112センチほど。39歳の誕生日目前にスキルス性胃がんの「ステージ4」宣告を受けたのを契機に、生きているうちに性行為を沢山したいと考えて、自らカメラを回し始めたという。
障害者と性行為――。健常者の多くは、この言葉の掛け合わせに思わず怯んでしまうはずだ。ところが、障害を抱え、死を目前にしながらも、「悔いのないように」性行為を記録し続ける池田氏の姿は、私たちに“本当の多様性”を否応なく突き付ける。
池田氏がカメラを回している間も病魔は身体をむしばみ続け、撮影開始から2年近くが経った2015年10月、池田氏は42歳の若さで帰らぬ人となった。遺されたのは、彼が「作品」と呼んだ、不特定多数の女性との性行為を記録した映像を始めとする、60時間を超す素材たち。
イケダの計画を聞かされた日
「僕が死んだら必ず映画館で上映して欲しい」
池田氏のそんな遺志を引き継いだのは、20年来の友人である脚本家の真野勝成氏だった。「相棒」や「デスノートLight up the NEW world」等のヒット作の脚本を手掛けてきた真野氏に、池田氏は自らが生きた証を託したのである。
真野氏は、「ナイトクルージング」等の監督作がある佐々木誠氏とタッグを組み、膨大な映像素材を58分のドキュメンタリー映画にまとめ上げた。
真野氏に話を聞いた。
「僕がイケダと出会ったのは、大学生の頃。共通の友人を介して知り合いました。大学卒業後、脚本家になる事が夢だった僕は知人の伝手で『週刊ポスト』の記者に。イケダは地方公務員となり相模原市役所で職員として働いていました。今回の映画はかなり規格外な内容ですが、本来のイケダは公務員ということもあり、どちらかというと行儀のよいタイプ。仕事の内容も税金関係や都市開発など、今回の映画で想像されるような姿とは程遠いものでした」
そういう表現が正しいかどうかは分かりませんがと前置きし、
「彼は“普通の障害者”であり、僕にとっては“普通の友人”だった。もちろん、イケダから風俗に行ったときの話などを聞くことはありましたが、友人同士の笑い話という感じでしたね」
転機が訪れたのは2013年の秋。先に触れたように、39歳目前だった池田氏はスキルス性胃がんのステージ4と診断され、休職を余儀なくされる。
「それまでイケダと映画について語り合ったりすることはなかったのですが、休職で時間が出来た彼に僕はいくつか映画を薦めたんです。イケダはどちらかというと、ヌルい恋愛ものやコメディよりはエッジの効いた映画が好きなようでした。ちょうどその頃、イケダと話す中で、自分の“営み”を“自撮り”するというイケダの計画を聞かされたのです。その流れでお互いに“それ映画になるんじゃない?”と話が転がり始めました」
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