事件現場清掃人は見た 孤独死した70代男性の“遺品ノート”を見て分かった意外な素性
孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、シェアハウスで亡くなった70代男性について聞いた。
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特殊清掃で最も重要な仕事は、遺品の整理だという。
「亡くなった人の想いが染み付いた品々に触れるとき、いつも身の引き締まる思いがします」
と語るのは、高江洲氏。
「遺品から故人の人生を感じ取るからです。その人の喜びや苦しみなど、あらゆる感情を想像し追体験することになります。どんなにひどい汚れを清掃するよりも、精神的にははるかに堪えますね」
今回ご紹介するケースは、印象に残った遺品の話である。
「都内のシェアハウスの管理会社から依頼がありました。70代の男性が孤独死したのです。死後2週間経って発見されたといいます」
フランス語のレシピ
高江洲氏は早速、現場に向かった。
「シェアハウスは、大手企業の寮を改装したものでした。普通、シェアハウスの住人は20代から30代の若い世代が多いですからね。70代の方は珍しいと思いました」
部屋は6畳弱のワンルームだった。
「バス・トイレ・洗面の3点ユニットがあり、キッチンはありませんでした。代わりに寮の食堂を共同キッチンにしていたそうです」
男性は、ベッドにもたれるようにして亡くなっていたという。
ひと通り部屋の清掃と消毒を終え、遺品の整理にとりかかった。
「部屋はきれいに整頓されてありました。衣類は非常に少なく、高級品ではないものの、センスの良いものでした。本人のこだわりを感じました」
部屋には小さなテーブルがあり、その上にノートが何冊も置いてあった。
「遺品を見れば、その人がどういう人生を送ってきたのかわかります。ノートを開いて、思わず息を飲みました。フランス語で料理のレシピが書き込まれてありました」
高江洲氏は、特殊清掃の仕事を始める前、都内のホテルで中華料理の料理人として働いた経験がある。
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