悪質すぎる「川崎祭り」、日本ハムの球宴ジャック…オールスターファン投票事件簿

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「申し訳ない気持ちで一杯」

 インターネットを悪用した大量得票による“川崎祭り”が起きたのが、03年だ。

 5月20日の中間発表で、中日にFA移籍して以来、右肩故障で2年以上も1軍登板のない川崎憲次郎が14万0549票を獲得し、セ・リーグ投手部門の3位に入った。

 4月下旬ごろから、川崎祭りと称してネット掲示板に「川崎投手をオールスターに出場させよう」などの書き込みが相次いだのをきっかけに、愉快犯的な大量得票が増えたのが原因だった。

「良識ある投票をお願いしたい」というコミッショナー事務局の異例の呼びかけにもかかわらず、投票は増えつづけ、6月17日には井川慶(阪神)を抜いてトップになった。

 思わぬ成り行きで世間の注目を集めることになった川崎は「多少のけがを押してプレーしている選手に申し訳ない気持ちで一杯。今の状況で出場することはできません。1票1票を自分への叱咤激励だと思って、1日でも早く1軍で投げられるように頑張ります」と出場辞退を申し出た。

 最終的に川崎は91万1328票を集めたが、70%にあたる63万7844票がインターネット、9万5774票が携帯電話からの投票だった。

 オールスター運営委員会では、明らかに異常な投票があったことと川崎本人が辞退したことを理由に、2位・井川(86万3460票)を特例として繰り上げ当選させた。

 今年のオールスターは、巨人から1人も選出されない可能性も取り沙汰されるなど、時代が変わりつつあることを感じさせるファン投票。6月28日の最終結果発表で、どんな結果が出るか、注目される。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年6月21日掲載

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