鉄道好きが愛す「地下鉄」 トンネルの真上には何が? 急カーブの意味は? 平坦区間がないのは?

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どのようにしてトンネルをつくっているのか

 札幌、仙台、さいたま、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡の各都市とその周辺都市とにネットワークをもつ地下鉄は大半の区間がトンネルで、沿線の景色を楽しめない。だから乗っていても退屈で、乗ったらとにかく早く目的地に着いてほしいと考える――。多くの人々にとって地下鉄とはこのような乗り物ではないだろうか。ところが、地下鉄は鉄道好きの人には人気が高い。トンネルが謎めいていて、たくさんの秘密が隠されているように見えるからであろうか。そんな地下鉄にまつわるアレコレをご紹介する。

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 筆者はNHKラジオ第1の「子ども科学電話相談」(https://www4.nhk.or.jp/kodomoq/)で子どもたちから寄せられた鉄道に関する質問の回答者を務めている。質問でやはり多いのが地下鉄に関するもので、特に大都市の地下にどのようにしてトンネルをつくっているのかという疑問をたくさんの子どもたちが抱いていた。

「地下に潜って前に向かって掘り進んでいるのではないですか」。トンネルのつくり方についてこのように考える人も多いであろう。

 この答えは半分は正しい。輪切りにしたバナナを大きくしたようなシールドマシンという機械が回転しながら前に進み、地中を掘るケースが多いからだ。いま「輪切りのバナナ」「回転」というキーワードが現れたとおり、トンネルの特徴として断面が円形という特徴が挙げられる。比較的新しい地下鉄によく見られ、駅と駅との間では一般的なつくり方となった。シールドマシンを用いるのでシールド工法と呼ばれる。

 残り半分のつくり方とは、地面から大きな穴を掘った後にトンネルを築き、最後に埋め戻すという方法で、開削(かいさく)工法という。土を掘る量をできる限り減らすため、トンネルの断面は電車の車体の断面に近い箱形となっているのが特徴で、シールド工法のトンネルとは容易に区別が付く。

トンネルの真上となる地上には何があるか

 日本初の地下鉄として1927(昭和2)年12月30日に開業したいまの東京メトロ銀座線の浅草-上野間のトンネルもほとんどが開削工法で築かれた。いまでもごく浅い地下にトンネルを通すとか、広大な敷地をもつ駅を地下につくる際には開削工法が採用される。

 さて、トンネルの真上となる地上には何があるかおわかりだろうか。「街中を走っているのだから、都会にあるさまざまなものに決まっているでしょう」というご意見はもっともだ。実を言うと、トンネル真上の地上にあるもので最も多いのは道路である。

 なぜかというと、地下鉄の建設費を少しでも抑えようと考えられたからだ。地下に線路を敷くためには、買収するか、地主から借りるなど地上の鉄道と同じように用地を確保しなくてはならない。用地に関する悩みは、JR東海が現在品川駅と名古屋駅との間に建設中のリニア中央新幹線のように、地下40m以下か地上の建物の基礎から10m以上下の大深度地下に地下鉄を敷けば解決する。たとえば都営地下鉄大江戸線は飯田橋駅と春日駅との間の1.0kmの区間で地下49mの地点を通っているが、これは例外と言ってよい。駅と駅との間はともかく、駅があまりに地下深くにあると利用しづらいからだ。

 こうした悩みもトンネルを道路の下につくればおおむね解決してしまう。そもそも地下鉄は都市計画の一環として整備されているのだから当然で、道路の所有者である国や自治体から道路占用許可を得るだけで済むからだ。さすがに民間人にはそのような理屈を押し付けられないから、トンネルは極力道路の下につくられた。

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