「警察御用達会社」トップが「ブラックドル」詐欺に引っかかるまで 財団は乗っ取られ本社ビルが「高利貸し」の担保に

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代表理事をお払い箱

 東京・江東区の「ポータ工業」が手がけるのは警備機材の販売やレンタル。防刃チョッキや防護盾、金属探知機などの警備機材一式を扱い、警察のほか、海上保安庁や防衛省が得意先だ。その「警察御用達」の生みの親が「ブラックドル」詐欺に遭ったというから皮肉な話である。

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 そのポータ工業の生みの親、(2020年現在)88歳になる後藤恒男社長が「ペテンの世界」に引きずり込まれたのは、12年に設立した「日本防犯安全振興財団」がきっかけだった。

「知人で企業コンサルタントを称する女性から後藤社長は財産保全にも役立つからと、熱心に財団設立を勧められたのです」

 と明かすのは、ポータ工業の関係者。

「その知人女性は、後藤社長に2億円を出資させたうえで、自らは事務局長に収まりました」

 女性のビジネスパートナーと称する男性による2億円超の横領発覚などを経て、19年6月には、後藤社長が与り知らないところで代表理事をお払い箱にされていた。知人女性に財団を乗っ取られてしまったのだ。

素性の怪しい人物

 後藤社長にとっては、まさに踏んだり蹴ったり。財団絡みで損失を被り、また、かつて警備機材の分野ではポータ工業の独壇場だったが、大手警備会社などの参入で徐々にシェア縮小を余儀なくされた。結果、資金繰りに窮するようになり、後藤社長は「ブラックドル」の罠に嵌(は)まるのだ。

 ブラックドルとは、ベトナム戦争当時、米国政府が外国人の傭兵に報酬を支払っていたとされる紙幣。表面が黒色に加工されており、特殊な溶液がなければ元には戻せない。そのブラックドルが現在も日本国内の米軍基地に保管されており、米軍将校の横流しによって、特殊な溶液付きで5億ドル分(530億円相当)を5000万円で入手できる――。

 後藤社長にこの話を持ちかけたのは、もともと知人女性から引き合わされていた男性。早い話、男性は詐欺師だった。当の後藤社長は、「この10年前後、素性の怪しい人物に言い寄られ、金銭を毟(むし)り取られてきました。原因は、私がその輩にさっさと刑事告訴などの反撃をしなかったことかもしれない」

「週刊新潮」2020年10月22日号「MONEY」欄の有料版では、「ブラックドル」詐欺の手口と詐欺師たちの人脈図を詳報する。

週刊新潮 2020年10月22日号掲載

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