事件現場清掃人は見た 「30代男性」が自宅アパートで“完璧な自殺”を選んだ理由
孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、首吊り自殺した30代男性について聞いた。
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特殊清掃では、自殺した人の部屋を訪れることはよくある。多くは死臭や遺体から出た体液でかなり汚れているものだが、今回ご紹介するのは最近増えつつある事例だ。
「葬儀会社からの依頼でした。現場は、東京の下町にある1DKのアパートで、IT関連企業に勤めていた30代の男性が自殺をしたというのです」
と語るのは、高江洲氏。
「下町だけに現場周辺は古い建物が多く、商店街にはスナックや居酒屋、弁当屋に床屋と何でもありました。男性はこの店で食事をしたのだろうか?この居酒屋で友達と酒を飲んだのだろうか、と亡くなった男性の生活を想像しながら現場に向いました」
紙おむつを着用
遺体を発見したのは、アパートの大家だった。
「しばらく姿を見かけないので、海外旅行にでも出掛けているのかと思って男性の部屋に行ってみたそうです。すると、台所の窓が少し開いているので不審に思い、中をのぞくと倒れている男性の足が見えたそうです。声をかけても返事がなかったので、警察に通報。結局、クローゼットの洋服掛けに取り付けたロープを首にかけ、亡くなっていたそうです。死後1週間経っていたといいます」
高江洲氏は、大家と一緒に部屋に入った。
「玄関ドアを開けると、非常にびっくりしました。いつもなら漂ってくるはずの死臭がまったくしないのです。部屋の片すみにブルーシートが敷いてありましたが、男性は首を吊った後、体液が出ることを予想してブルーシートを自分で敷いたようです。ところが、それも全く汚れていませんでした。不思議に思って大家さんに尋ねると、男性はなんと紙おむつを付けて首を吊っていたそうです」
最近、紙おむつを着けて首吊り自殺する人が増えているという。
「通常、首吊り自殺をすればかなりの量の体液や排泄物が出ます。ブルーシートが全く汚れていなかったということは、紙おむつを2枚も3枚も重ねて付けたのでしょう。さらに、体液を減らすために、食事を何日か絶っていた可能性もあります。男性はIT企業に勤めていたんですから、自分が死んだ後、身体がどうなり、部屋がどのように汚れていくか、インターネットで徹底的に調べていたのではないでしょうか」
部屋も、きれいに整頓されていた。
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