立民「森裕子」副代表が「北朝鮮にコロナワクチンを送れ」 浅はかな発言の根底にある考え

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幹部はワクチン確保?

 そもそも北朝鮮という国家の体制と文化を考えれば、「我が国にコロナ感染者はいない」という主張を、尊重した上での話をしないといけない。

「北朝鮮は、メンツと大義名分を重んじる国家です。コロナ感染者はいないと言っているのに、ワクチンを贈ると言えば、メンツが潰され大義名分を失います。蓮池さんが言うように、全般的な医療技術や医療支援なら応じるでしょう。その中にワクチンも入れるという方法はあるが、最初からワクチンと言えば『我々を嘘つきというのか』と怒ります。“王族”たる金ファミリーや、朝鮮労働党や軍部の幹部など、『国家にとって必要な人材』に打つワクチンは、とっくに入手しているという情報を流している人々もいます」(同・重村教授)

 世界各国が自国の防疫に懸命だということは、北朝鮮の内部情報を入手しようとする米中韓のスパイ活動が下火になることも意味する。

 中国も「北朝鮮どころではない」という場面が少なくない。

「もしコロナ禍がなければ、中国はバイデン政権非難への同調を強く求めたが、北朝鮮はバイデン政権非難を全くしません。中国の圧力を回避できた面もある。むしろコロナ禍は中国の圧力を抑え、米韓中露への内部情報流出を抑え、外の情報流入を遮断し国民コントロールしやすい好機です。人の流れが止まれば、監視も容易です。北朝鮮の内部事情は、私たちの常識で測れるものではないということを再認識する必要があると思います」(同・重村教授)

帝国主義的発想

 立憲民主党に所属する森議員は否定するだろうが、重村教授は「森さんのアイディアは実のところ、北朝鮮から帝国主義的な発想と批判されると思います」と指摘する。

「自分たちより劣った国に善意の施しを与えるというのが、帝国主義の根幹を成す重要な一要素です。無知蒙昧な野蛮人を優れた民族が支配し、義務教育などの善政を施すというロジックです。森さんの“提言”は、北朝鮮の防疫事情を日本より劣っていると決めつけ、ワクチンを施せば言うことを聞くという発想であり、これこそが帝国主義なのです。まさに正真正銘の『上から目線』だからこそ、多くの人から批判されるのだと思います」

 野党第一党の幹部議員として、もっと重要な質問はいくらでもあるという。

「2002年、当時首相だった小泉純一郎さん(79)は平壌を電撃訪問しました。一部拉致被害者の帰国や日朝平壌宣言など成果もありましたが、北朝鮮が『日本は経済協力資金や国交正常化約束で我々を騙した、約束は実行されていないから信用できない』と恨んでいるのも事実です。北朝鮮の高官は「約束の書面を多くもらっている」と述べています。小泉外交の功罪は、まだ研究家の間でも不明な点が少なくありません。例えば森さんが特別委員会に秘密交渉をした田中均アジア局長(当時)を呼んで、どんな秘密約束をしたのかを問いただし、それを政府に履行させれば、拉致問題解決に役立つはずです」(同・重村教授)

デイリー新潮取材班

2021年6月17日掲載

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