「東芝と経済産業省が一体となって」の衝撃 東芝を揺るがす、核心をついた調査報告書

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77万通のメールと文書をAIで解析

「隣が大火事になっている横でバーベキューをしていると、それでは済まなくなることもあるため、巻き込まれないようにしてほしい」

 報告書は、経産省情報産業課長が外国株主の「3Dインベストメント・パートナーズ」側に電話会議でこのように伝えたと認定している。「大火事」というのは、エフィッシモのことだ。

 また、同じく外国株主の「ハーバード大学基金」(HMC)に対しても、経産省参与(当時)が、株主提案に賛成しないように働きかけていたと認定された。

「報告書に記載されているように株主の権利が不当な圧力によって制限されていたとしたら、それはあってはならないことです。外資規制は法規制として画一的にやるべきで、個別の案件で官庁が圧力を掛けることは許されることではありません。『株主の権利、平等性の確保』を謳うコーポレートガバナンス・コードに反することを企業と政府が一体となってやっていたとすれば、海外投資家の信頼を失い、政府が掲げる国際金融センター構想は絵に描いた餅になってしまいます」(前出の会計士・公認不正検査士A氏)

 今回の調査は、オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所の前田陽司弁護士、兼子・岩松法律事務所の木﨑孝弁護士、和田倉門法律事務所の中村隆夫弁護士の3人が担当したが、いずれも知る人ぞ知る凄腕弁護士として有名だ。

 52万通のメールと25万件の添付文書を分析したフォレンジック調査は、株式会社 FRONTEOによるAIを使った解析手法を採用、事実の認定を緻密に積み重ね、「東芝経営陣と経済産業省が一体になって物言う株主の抑え込みを行っていた」とする衝撃的な結論を導き出した。

 梶山弘志経産大臣は15日、「安全保障に関係する個別企業への対応を行うことは当然だ」として、経産省としての調査は行わないと表明している。東芝は、報告書を踏まえて速やかな真相の究明を行い、責任の所在を明確化するとしているが、来る6月25日の定時株主総会を前に「嵐」が吹き荒れることは避けられないだろう。

北島純
社会情報⼤学院⼤学広報・情報研究科特任教授、公認不正検査士(CFE)。東京⼤学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。国会議員政策秘書、駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在BERC(経営倫理実践研究センター)主任研究員、東洋学園大学大学院非常勤講師を兼務。専⾨は外国公務員贈賄罪、政治コンプライアンス、グローバル広報、戦略的パートナーシップなど。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月17日掲載

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