東京五輪PVをめぐり「武蔵野市」と「三鷹市」が対立 不仲説の背景に60年前の“すれ違い”

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 東京五輪・パラリンピック期間中のパブリックビューイング(PV)をめぐっては、コロナ感染拡大防止の点から、各地で中止や見直しを求める声があがっている。武蔵野市と三鷹市にまたがる「井の頭公園」では、400インチ超の巨大ビジョンが設置予定。これをめぐり、両市は真っ向から対立しているのだ。

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 武蔵野市は6月4日、都にイベント中止の要望書を提出。これに対して三鷹市は7日、入場制限や飲食ブースの廃止など徹底した感染症対策を講じることを求める要望書を提出している。

「(開催は)人の流れを抑える、感染を防ぐというメッセージと矛盾する」(武蔵野市の松下玲子市長)

「最初から中止を言う段階ではない。事前予約制で人数を絞り込むと同時に、空いたスペースに集団接種会場を設置してもできる」(三鷹市の河村孝市長)

 と、トップ同士も主張するこの問題。もともと武蔵野市は、三鷹市と連名で開催中止の要望書を都に出す予定だったが、三鷹市がこれに賛同しなかったという経緯がある。

 PVの会場は公園の南側にあたる三鷹市側に設置されるが、来場客が多く利用するであろう「吉祥寺駅」は武蔵野市に位置する。PV開催は五輪パラ期間中の11時から18時までを予定しているが、その後は、吉祥寺駅周辺にある飲食店や繁華街に人が流れていくことも予想される。武蔵野市側が開催に難色を示すのも、もっともな話ではあるのだ。

両市はライバル関係?

 コロナをめぐる両市の“差”は、今年4月の「まん延防止等重点措置」実施期間中にも露わになった。

 吉祥寺駅の隣駅である「三鷹駅」は、北口が武蔵野市で、南口が三鷹市にあたる。この時、武蔵野市だけが措置の対象区域になっていたため、北口の飲食店は20時までの営業であったのに対し、南口は21時までOKという歪な状況になっていたのだ。東京都が決めた線引きによって生じた問題ではあるものの、武蔵野市側の店舗からは、不満の声が上がっていた。

 武蔵野市と三鷹市はライバル関係にあるという見方は少なくない。2018年2月6日に放映された『ありえへん∞世界』(テレビ東京系)では、やはり三鷹駅を境とした武蔵野市と三鷹市の“対立”を紹介。「三鷹は田舎で武蔵野はオシャレ」「吉祥寺には特別快速は止まらないが三鷹にはとまるから格上」といった両市住民の声をとりあげている。

 ダイヤモンド社が19年に発表した「東京49市区の推計世帯年収ランキング」では、武蔵野市は9位(551万円)で、三鷹市は11位(518万円)と僅差。だがリクルート住まいカンパニーの「住みたい自治体ランキング2021」になると、武蔵野市15位で、三鷹市は41位と、両市のイメージには開きがあるようだ。

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