レスリングの新星「清水賢亮」の叔父は清水宏保 偉大なスケーターから学ぶべきことは
オリンピック代表は不参加だったが、レスリングの明治杯（全日本選抜選手権）が5月末に行われ、「パリ以後」を目指す新鋭たちが競い合った。その中で、注目された一人が拓殖大学4年の清水賢亮（21）である。
昨年暮れに行われた天皇杯（全日本選手権）の男子グレコローマン63キロ級でライバルの山田義起（エムアンドケイ）に圧勝して初優勝していた。明治杯も制すれば、規定で10月にオスロ（ノルウェー）で行われる世界選手権に初出場となる。
しかし、なんとエントリーミスによって明治杯に出場できなかった。これで世界選手権の代表争いはプレーオフに持ち込まれた。試合は3－3の熱戦になったが、山田が一点刻みだったのに対して、2点のビッグポイントを取っていた清水がかろうじて勝利し、初の世界選手権出場を決めた。
清水は「申し込みが遅れて出場できず、応援してくれた方に申し訳がなかったです。滅多にないチャンスをものにできて、よかった」と安堵の様子で語った。
グラウンド（腹ばい姿勢）での防御が弱いとされていた清水は、日本レスリング協会の西口茂樹強化本部長（拓殖大学レスリング部顧問）のアドバイスで、セルビアの87キロ級の強豪ズラビ・ダツナシビリ選手の防御を研究したことなどが生きたという。
「後輩にも返されるくらいでしたが、西口先生のアドバイスのおかげで、短期間でも上達しました」と恩師に感謝した。
叔父は長野五輪スピードスケート王者の清水宏保氏
さて、この清水選手には誰もが知る偉大な「レジェンドアスリート」の叔父がいる。清水宏保氏（47）だ。長野五輪（1988年）の男子スピードスケートの花形種目500メートルで、30センチ以上身長が高いJ・ウォザースプーン（カナダ）や、堀井学（現衆議院議員）ら強敵を破って見事に金メダルに輝き、国民を歓喜させた男だ。そういえば賢亮選手と顔がよく似ている。目元などそっくりだ。清水賢亮は12月の天皇杯の後、「叔父からは足腰を鍛えることなどのトレーニング方法をよく教えてもらった。『パリ五輪に応援に連れて行ってよ』と言われています」などと話していた。
拓殖大学でかつて監督、部長も務めていた西口氏は「プレーオフは派手な点の取り合いになるかと思ったが、清水も山田も防御が優れていた。清水に参考にしてほしかったセルビア選手の技術を彼はよく研究していた。普通は映像を見たからといってすぐ身につくわけではないが、それができるのは彼の優れたセンスですね。有名な叔父さんからは筋肉をつけるトレーニング方法などを教えてもらい、それが生きている。顔だけではなく、足腰の強さや素晴らしい質の筋肉も叔父さん譲りですよ。大学に入った頃は50キロ代の体重で体力もなく高校生にも負けていたのに、みるみる筋肉がついて大きくなった。今4年生ですが、練習、食事環境なども整った自衛隊に進むなどして、末は五輪階級である67キロ級にアップさせてパリ五輪のメダルを目指してほしいですね」と期待を寄せる。「今は協会の強化本部長ですから中立的立場なんですけど……」と西口氏。日本体育大学出身でグレコローマンのエースとしてバルセロナ五輪代表でもあった西口氏は、早くから清水の才能を買って熱心に指導してきた。やはり気になるだろう。無理もない。
拓殖大学レスリング部は大学レスリングの名門だ。今春のアジア選手権で三回目の五輪出場を決めたフリースタイル86キロ級のベテラン高谷惣亮（32）も輩出している。ローマ五輪に始まり、1964年の東京五輪、アテネ五輪、ロンドン五輪などに代表を送ってきた。2012年のロンドン五輪では女子レスリングの注目度が高かった中、フリースタイル66キロ級の米満弘達が、低迷していた男子レスリング界に24年ぶりの五輪金メダルをもたらした。同五輪では湯元進一も銅メダルに輝いた。
その他、格闘家から国会議員（無所属）になった須藤元気氏、「日刊スポーツ」の記者として57年前の東京五輪を取材、91歳の今も現役記者を続ける宮沢正幸氏など、バイタリティ溢れるユニークなOBが揃う。
清水賢亮は、初参加だった4月のアジア選手権では、肘の皮膚病が影響して二回戦で敗退した。悔しくて悶々とする中、レジェンドに「まだまだ若いから。これも経験だよ」と言われて気が楽になったという。「外国選手は日本人とは身体の性質が違う。外国人ばかりを真似するのではなく、自分に合ったスタイルを練習すること」などと言われているという。「世界で活躍した叔父から学ぶことがすごく多い。普段のメニューから聞いて取り入れています。いい環境で育っているなと思います」と賢亮。
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