“シロップ入れますか?”の隠語で酒提供、会員制も増えて… 新宿ゴールデン街の今

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 5月末からつづく緊急事態宣言は6月20日で解除され、以降は東京都などでの「まん延防止等重点措置」をとることが検討されている。だが、酒類の提供は引き続き禁止される見通しだというから、飲食店には厳しい状況が続きそうだ。

 そんななか、東京・新宿の「ゴールデン街」では“隠語”を使ってアルコールを提供する店も現れ始めた。『東京女子サバイバル・ライフ 大不況を生き延びる女たち』(コスミック出版)などの著書があり、夜の街に詳しい作家の酒井あゆみ氏が取材した。

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「“シロップ”入れますか?」
「じゃあ、薄薄で……」

 6月某日の17時すぎ。ゴールデン街のとある飲食店では、ママと客との間でこんなやりとりが交わされていた。表の張り紙には〈喫茶営業中〉〈お酒の提供はしていません〉とある。しかし“シロップ入れますか?”にイエスと答えれば、緑茶やウーロン茶に焼酎が注ぎ足される。ほかに“ブースト(強化)”という呼び方もしている。

「酒精強化ノンアルコールビール」

 というオーダーを受け、ママが冷蔵庫から出したのはキリンのハートランドだった。

 ゴールデン街は2000坪ほどの面積に300もの店が密集している飲み屋街である。コロナ禍前には外国人観光客の観光スポットとしても注目されていたが、緊急事態宣言下の現在、街は閑散としている。ほとんどの店は〈6月20日まで休みます〉と店先に張り出して休業中。だが6月1日以降は、ちらほらと店を開けるところも増えた。実際に今月から店を開けているある店の主は「しびれを切らした」と説明する。

「店を閉めていてもお金(※協力金、給付金)はもらえるから、別に開けなくてもいいんだけれど。お客さんが待っているからね。ときどき都の人間が、感染防止対策がきちんとできているかをチェックしにくる。でも『雇われですから、上から言われてすみません』って感じだよ。でも、せいぜいあごマスクを注意されるくらい。彼らも仕事だからね」

 また別の店のマスターは、

「ゴールデン街も6月1日から開けているお店は多いし、新宿三丁目も似たようなもん。あっちでは誰が手に入れたか分からない、真偽不明な“都の見回り予定表”が出回っていて、自分の地域が近づいてくると備えるんだって。都に内通者がいるのかな」

 週末だけ開けるという店もある。だから金曜日ともなれば、十数店は店を開けているのではないか。通りを歩けば、どこの店からかカラオケの歌声も漏れ聞こえてくる。

 街を訪れる客の目当てはもちろん、酒とお喋りである。もともと会員制の店も多いが、今ではそうではなかった店も、即席の会員制の看板を掲げている。口の堅い常連だけを受け入れ、仲間内だけでこっそりと……というわけだ。実際、“喫茶営業中”を謳うバーでは、一見と思しき客の「ウイスキーもらえますか」という注文を、店主が「お酒は無理なんです」と断っていた。だがその手元を見ていると、馴染みの客のアイスティーにはこっそりアルコールを入れていた。

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