巨人、山口俊の“古巣復帰”は独走阪神を追撃する好材料となるか?
気がかりは主力選手の状態
巨人は6月10日、米ジャイアンツのマイナーリーグでプレーしていた山口俊との契約を発表した。今季の年俸は3000万円(推定)で、来季までの2年契約。2019年オフにポスティングシステムで米国へ渡ったが、2年ぶりの古巣復帰となる。セ・リーグ首位を独走する阪神を追撃するために、ある意味“巨人らしい”積極的な補強といえる。
チームは、交流戦でパ・リーグに苦戦を強いられ、首位の阪神との差を詰めるどころか、3位のヤクルト、4位の中日に迫られ、調子がなかなか上がってこない。山口の復帰によって、巨人は形勢を逆転できるのだろうか。
チームの状況をみていくと、まず気がかりなのは主力選手の状態だ。エースの菅野智之は首と右肘を痛めて、今シーズン早くも2度の登録抹消。6月6日の日本ハム戦で復帰を果たすも、立ち上がりから失点を重ねて負け投手となり、本調子には程遠い内容だった。
野手のリーダーである坂本勇人は右手親指の骨折で約1ヵ月間戦列を離れていたほか、丸佳浩は打撃不振で現在、二軍落ちしている。リリーフ陣をみると、抑えのデラロサ、セットアッパーの中川皓太が揃って調子を落として、勝ちパターンが確立できていない。最近の試合では、小刻みに投手交代を繰り返して、何とか目先を変えて凌ぐというケースが目立っている。
投手では高橋優貴や高梨雄平、野手では岡本和真やウィーラー、新加入の梶谷隆幸といった面々が奮闘しているが、投打とも阪神の主力選手と比べると、かなり見劣りするのが現状だ。
0勝3敗、防御率6.17
そして、一気にレギュラーを奪うような勢いのある中堅、若手がなかなか出てこないことも悩みの種。特に深刻なのが野手である。好調を維持していた吉川尚輝が、同10日のオリックス戦で左手に死球を受けて骨折し、長期離脱を余儀なくされた。このほか、外野の松原聖弥が目立つくらいで、結局、穴を埋めているのはウィーラーやスモーク、中島宏之、亀井善行といったベテランばかりである。
一方の投手陣は、若手がなんとか支えている。昨年9勝をあげた戸郷翔征の停滞は誤算だったが、勝ち頭となっている高橋以外にも、大卒3年目の今村信貴が開幕からローテーションを守り、高卒3年目の横川凱は、飛躍の雰囲気を感じさせるピッチングを見せている。
このようなチーム事情を考えると、なおさら、山口の加入がもたらすプラスは小さいと言わざるを得ない。
大きな気がかりなのが山口自身の状態だ。昨年はメジャーでわずか2勝にとどまり、防御率は8点台と低迷。今年は、マイナーリーグで5試合に登板して0勝3敗、防御率6.17という寂しい数字が残っている。19年には15勝をマークして、最多勝を獲得しているが、過去に二桁勝利を記録したのは2回だけ。今年で34歳という年齢を考えても、過剰な期待はかけづらい。
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