「JOC経理部長」自殺報道に関係者が激怒 JOCを組織委や招致委と“混同”のお粗末

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JOCは火の車

 早川氏は、16年に招致委の裏金疑惑が生じた時、JOCが設置した調査チームの座長を務めた。

「なぜ招致委の問題なのにJOCが調査したかというと、招致委はすでに解散しており、他に調査する母体がなかったからだけです。あの時の資料を改めて調べてみましたが、自殺したとされるJOCの経理部長が招致委に出向していたという記録はありませんでした。その後、設置された組織委にも出向していない。そもそもまったく違う組織の経理なので、彼は『裏金疑惑』や『人件費問題』に物理的に関与しようがないのです」

 その上で早川氏は、あくまで仮定と断りつつ、次のように語る。

「もしJOCの経理部長の立場にある方が仕事に悩んでいたなら、それはJOC内部の経理問題についてでしょう。いまJOCは火の車です。コロナ禍で、主催するスポーツ大会がことごとく中止になってしまったため、マーケティング収入やスポンサー収入が激減しているのです。だが、職員の給料や恒常的な事業費など支出は変わらずあるし、国立競技場の横に新設された新拠点『ジャパン・スポーツ・オリンピック・スクエア』の建設費も重くのしかかっている。経理部長がもし何かに思い悩んでいたとしたら、コロナ禍で逼迫しているJOCの経理についてと考えたほうが自然なのです」

「Qアノン」状態

 ネット上では「疑惑」を「真相」のように紹介する者まで出てきている。例えば、2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、自身のYouTubeチャンネルで、経理部長があたかも贈収賄疑惑や人件費問題に関与していたかのように述べた後、次のように語った。

「嘘をついて刑事罰になるか闇に葬られるかの二択になってしまうんですね。家族もいらっしゃった方なので、秘密を守るために自殺したのか鬱病になっちゃったのかどっちかだと思います」

 このような状況を、早川氏は「もはやQアノン状態」と呆れる。前出のJOC関係者はこう憤る。

「彼が不正経理に加担したかのように受け取れるネット上での言動は看過できません。まじめ一徹に頑張ってきた故人の尊厳を傷つけており、ご遺族がいたたまれない」

 開催ありきで進める政治や組織委への反感が、亡くなった部長の肩書きに過敏に反応してしまったのかもしれない。だが、蓋を開ければ、思い違いから始まった情報が一人歩きしているだけなのだ。メディアも、慎重に事実関係を確認したうえで報じるべきである。

デイリー新潮取材班

2021年6月21日掲載

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