積水ハウス地面師事件 責任逃れでクーデターまでやった前会長を追い詰める株主代表訴訟
部下の責任を公の場で明言
株主代表訴訟では、阿部氏の他に地面師事件に決裁段階で関与し、彼のクーデターに与した4人の幹部の善管注意義務違反も問われているが、焦点はまさに阿部氏の責任である。
現在、証人の調整が行われており、注目の証人尋問は10月に行われる予定だ。そこに証人として登場するのは、元マンション事業本部長をはじめ、法務部長、不動産部長、そして阿部氏本人と見込まれている。
かつての阿部氏の部下である3人はすでに責任を取り積水ハウスを退職し、内2人は、子会社に再就職するなど依然として阿部氏の影響下にあると見られる。そのため彼らは、「地面師にうまく誘導された」「阿部氏は詳細を知らなかった」と主張すると見られており、積水ハウスのトップとして君臨した彼は部下であった彼らの責任を強調することになるだろう。
トップが部下の責任を公の場で明言する――。企業として最悪の光景を世間にさらすことになるわけだが、こうした保身の経営者の姿は、積水ハウスだけでなく日本社会にも大きなダメージを与えることになりはしないか。
阿部氏はこの4月に代表取締役と会長の職を退任した。内規の代表取締役の定年まであと1年を残しての退任で、背景には機関投資家などから続投への強い反発があったからだと言われている。現職の会長のままで部下への責任転嫁の主張をせずにすんだことが、せめてもの救いだろう。
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