57歳の婚活がうまくいかない原因を率直に女性たちに聞いてみた

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 フリー記者の石神賢介氏が「デイリー新潮」で、20回にわたって連載した「57歳からの婚活リアルレポート」。

 その婚活はコロナ禍前に始まり、今も続行中だという。

 この2年余り、石神氏は数多くの女性と出会い、時には深い関係になり、時には「クソ老人!」と罵られ、時にはまさかこの年で、というほどの失恋もした。

 しかしいまだに結婚には至っていない。

 一体、どのあたりに問題があるのか。

「どんな意見でも参考にしたい」と石神氏が言うので、番外編として女性たちに、「どこがダメなのか」率直な意見を聞き、本人に見解を求めてみた。

本気で結婚したいの?

(1)「とにかく本気で結婚したいという気持ちが伝わってこない」

 これはネット掲載時にコメントとしてもよく寄せられていた意見である。「あくまでもネタとして婚活をしているだけなのでは」ということだ。

 こういう疑念を持たれるのは、登場する女性に“個性派”が多いのも一因だろう。「クソ老人!」は序の口、やたらとセクシーな写真を送りつけてくる女性、高価な食事を露骨に要求してくる女性、「体の相性を早めに確かめたい」という女性、さらには「在日米軍兵士。テロ組織から得たダイヤを預かってくれませんか」というような女性等々、何とも強烈な人が続々登場するのだ。

 会う前におかしいとわかっていそうな人にもアプローチしている。このあたりに「本気なの?」というツッコミが入る余地がありそうだ。

 婚活したいと言いながら、単に面白そうな女性にアプローチしているだけなのではないか?

 この疑問に対して、石神氏はこう弁解する。

「この点については、たしかに原稿ありきという面があるのは事実です。ただ、結婚願望は本当に強くあります。原稿ではなく結婚を最優先にしていることにウソはありません。

 それと、婚活に限らず、おもしろい人、常軌を逸したタイプの人に出会うと、好奇心を持って、つい近づいて行ってしまうところがあり、その欲求は抑えられません」

“おひとり様男性の傲慢さ”を感じる

(2)「仕事柄なのでしょうが、相手の女性を観察しているような印象を受けます。されている側からすると、見下されたり、馬鹿にされたりしているような気持ちになると思いました。何となく“おひとり様男性の傲慢さ”のようなものを感じたのです。すみません」

 一種の職業病だろうか。たしかに相手のことをよく見ている。また容姿に関する描写が多い。「アプリで見た写真と違いすぎる」という不満を抱くことも……。

「これも十分に自覚していて、仕事柄指摘されるとつらいところです。婚活に限らず、ものすごく観察癖があります。街を歩いていても、すれ違うすべての人をチェックしています。傲慢さも自覚しています。

 たぶん“おひとり様”だからというわけではなく、僕自身に傲慢なところがあるのだと思っています。傲慢なこと、意地悪なことがいつも頭の中をよぎり、でも思いついたことを行動に移さないように心がけているつもりでした。でも、確かに拙著を読み返すと、ごまかし切れていない気はします……」

(3)「どういう女性と一緒に暮らしたいのか、どういう暮らしをしたいのか、ということのイメージが持てていない感じがします。そういう話を相手ともしていないのでは」

「まず、どういう女性と暮らしたいのか――というと、仕事を自由にさせてくれる人です。そして、なんでも話をしたい。

 でも家事は自分でやるし、束縛はしません。尻に敷かれたいです。婚活では、そういう会話をするまで関係が進んでいません」

外見にこだわりすぎているのでは?

(4)「どうも外見にこだわりすぎている感じがします。また、ネタになりそうな面白そうな人を好んでいる感じが。このへんも本気度が伝わらない理由では」

 先ほどの「観察眼」とも関係があるのだろうが、美人になると露骨にテンションが上がっているように見えるのは否めない。逆もまたしかりである。このあたりが反感を買いやすいのだろうか。

「外見にこだわってはいけない、こだわってはいけない――といつも自分に言い聞かせているのです。でも、きれいな女性と会うと、つい寄って行ってしまいます。相手がどんな性格でも寄って行ってしまいます。これは思春期にもてなかったことがトラウマになっているのだと思っています。でも、外見だけでなく、楽器が演奏できるとか、着付けができるとか、イラストを描いているとか、専門的ななにかを職業にしている女性にも、寄って行ってしまいます」

“年下”にこだわっているのでは?

(5)「自分が還暦手前なのに、50代の女性からの申し込みを躊躇する神経がわからない。その年になってもまだ年下にこだわるのでしょうか」

 40代の女性にも積極的にアプローチを続けているし、20代からの食事の誘いにもホイホイ乗っている。このあたりから察するに、還暦近いのにどうも若い相手に鼻の下を伸ばしているだけなんじゃないか、という疑念である。

「これは誤解で、50代の女性とも交流しています。50代の女性は概ねきちんとしていて、とくにエピソードがないことが多く、あまり原稿にしていないだけです。

 結婚相談所で出会い大失恋した女性も50代です。本には書いていませんが、この女性をはじめ何人かと今もご飯を食べています。ただ、全員ではありませんが、バブル期を体験している50代シングル女性のかなり多くが、最初から高額な食事をはじめとする特別待遇を求めてきます。もっとも、これは僕の婚活市場価値の低さと関係しているとは思いますが」

(6)「外国籍の人だから『価値観が合わない』というような短絡的な思考を述べていた点に違和感をおぼえました。まだ『子持ちは無理』というのは生活設計とも関係するので理解できますが、国籍でどうこう言うのはおかしい」

「国籍というよりも、あくまでも会った外国の方に関しては文化が違い、会話をしていても相手の話す内容がよくわからなかったのです。相手も僕の話を理解していなくて、おたがい“なかなか難しいですねえ”と話しました。社内や同じ学校の知り合いはともかく、婚活はいきなりの出会いですから、難しいです」

(7)「いつも同じブルージーンズなのが気になります。お気に入りなのはわかるのですが、洗っていないのではという疑念が……」

 これは石神氏と面識のある編集者からの意見だ。

「これは編集者のA子さんですね(笑)。まず、同じようなジーンズをたくさん持っているので、洗っています。女性と会うときは、デニム以外も履いていくので、ご心配なく。イメージできないと思いますが、スーツも着ます」

(8)「メールの返信が滅茶苦茶早いのは、仕事をするうえではとても有難いのですが、もしも日常生活でもこのスピードだとすると、人によっては引いてしまうかもしれません」

 これもA子さんの意見だ。

「仕事では即レスを心がけています。可能な限り早くしています。まわりがみんなせっかちなので仕方がありません。

 でも、たとえば婚活アプリでは時間を空けています。ただ、翌日までには返事をするようにはしてきました。婚活アプリの女性のプロフィールを読むと“レスポンスの速い人を希望します”というコメントは目立ちます」

“相手に合わせる”ことが大切なのでは?

(9)「就職で『自分に合った仕事』を探すよりは、『仕事に自分を合わせる』ほうが正解であることが多いのと同じように、婚活でも『自分にあった相手』を探しつつも『相手に自分を合わせる』ことが大切ではないでしょうか。相手によって自分が変化することを楽しむくらいでないと、他人と暮らすことはできないのでは」

 年を取れば取るほど、どうしてもこだわりが多くなる。相手に合わせるのも難しい。誰もが好々爺になれるわけではない。

「これも理解していますが、自我が育ち切っているので、かなりエネルギーを使います。でもね、僕は相手に合わせていますよ。ものすごく合わせています。女性の求める通りにしています。むしろ、合わせすぎることが失敗になっています。どこまでも合わせてしまい、女性の言いなり状態になり、関係が長続きしません」

「合わせすぎる」ってたとえばどんなことなんでしょうか。

「食べるものも、お店も、出かける場所も、スケジュールも、女性の好みや都合に合わせています。相手に合わせるのは好かれたいからで、実際にはなかなか大変なのですが、僕に主体性がないと思われているような気がします」

 女性たちから寄せられた疑問、意見に対する石神氏の答えをここまで見てきて、一つの傾向が見えてくる。あらゆる指摘はすでに彼の中では「想定内」「検討済」なのだ。

 そして、彼のコミュニケーション能力には問題はない。むしろ長年、インタビューの仕事をしてきただけあって、平均よりもはるかに高い「聞く力」を持っている。年配者の場合、自分の話ばかりする人も珍しくないが、相手に気分よく話をさせる能力もある。

 それゆえに、婚活アプリ、結婚相談所、婚活パーティーで出会った女性とは、デート1回で終わるのではなく、数多く「一歩先」へと進んでいる。単なるデート以上の交際に進んだケースも少なくない。連載をまとめた新著『57歳で婚活したらすごかった』には、「超実用的『婚活次の一歩』攻略マニュアル」が収録されているほどで、「次の一歩」の実績は十分なのだ。

 にもかかわらず……である。

 この状態を見ると、中高年で婚活なんてやっぱりムリ!と思う方もいるかもしれない。

「婚活」は生活に“プラスの効果”を生む

 が、石神氏はこう前向きに語る。

「たしかにゴールには至っていませんが、可能性はかなり実感できました。婚活パーティーでも、婚活アプリでも、苦戦はしたものの、女性との縁はあったのです。食事もしたし温泉にも行きました。

 ジジイでも恋愛まではこぎつけられた、と感じています。

 そして恋愛ができると、自信もつきます。僕はまだ大丈夫だ、という思いは仕事の活力になりました。結婚はできていませんが、婚活を頑張った成果はあったと感じています」

 だから年齢にかかわらず、婚活にチャレンジすることは悪くないのでは、という。

「自分の婚活市場価値がリアルにわかり、つらい思いをするかもしれません。僕もそういう気持ちになったことがあります。でも、そのときはそのとき。

 アプローチの軌道修正を行い、自分のバージョンアップに励めば、成果は上がるかもしれません。エネルギーもわいてきます。

 何より、好かれたいという欲求が高まると、服装や言葉遣いにも気をつけるようになるので、婚活に限らず、周囲が好意的に接してくれます。明らかに生活にプラスの効果を生みます」

 石神氏の前向きな旅はまだ続く――。

デイリー新潮編集部

2021年6月10日掲載

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