コロナ禍で鮮明になった「日本の没落」…経済学者が23年前に著書で鳴らした警鐘
代表は小泉進次郎
最後に、同書の特徴である社会の土台である人口の変化に焦点を当て、将来予測のカギとする部分を紹介したい。
日本では官界のトップ(事務次官)になるのは概ね55歳ごろ。また財界のトップ(社長)になるのは、65歳ごろである。そして政界のトップ(派閥ボス)に相合しい年齢は70歳。2050年にそれぞれの年齢になるのは、森嶋がこれを執筆していた1998年の時点で3歳と13歳と18歳の前後の青少年である。
「彼らが52年後にどんな人間になっているかを推定すれば、2050年の日本社会の土台の主要メンバーを推し測ることが出来る」
そう考えれば、2050年に政界の主要メンバーを輩出する世代の代表は、1998年に17歳であった小泉進次郎・衆議院議員である。彼は今、世間から将来の首相候補と目されている。しかし、森嶋の警鐘を真剣に捉えずに、今の劣化した政治システムが続くのだとしたら、世襲政治家にして党人派の小泉進次郎が政界で強い権力を握るころに、日本は没落しているのである。
註:文中で敬称は全て略した。森嶋通夫『なぜ日本は没落するか』は、1999年に単行本版、2005年に著作集版、2010年に文庫版が、それぞれ岩波書店から刊行された。小宮隆太郎・東京大学名誉教授およびヒュー・パトリック・コロンビア大学名誉教授との論争は、単行本版にだけ収録されている(2~9ページ)。
[5/5ページ]