「平和の少女像」など「あいちトリエンナーレ」で物議を醸した3作品が上陸 慰安婦合意はどこへ?
税金が投入された2年前の芸術祭
2019年の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」で物議を醸した企画展「表現の不自由展・その後」が戻ってくる。東京・新宿と愛知・名古屋で6月25日以降に開催される予定で、あいちトリエンナーレで抗議が殺到した「平和の少女像」なども展示されるという。
そもそも「表現の不自由展」は2015年から開催されてきた展覧会で、内容は国内で公開中止などになった作品を集めて展示するものだった。
それが大きな騒動に発展したのが冒頭に触れた「表現の不自由展・その後」だった。展示されていた慰安婦を象徴する「平和の少女像」などへの抗議が殺到。脅迫も主催者側に届いたため、わずか3日で中止に追い込まれた。
その後に展示は再開されたが、その判断をめぐって、愛知県の大村秀章知事と名古屋市の河村たかし市長が対立し、大村知事のリコール運動に発展。その署名運動の中で不正事件が発覚し、2021年5月にリコール運動を主導してきた団体の事務局長らが逮捕されるに至ったのだった。
なかなか数奇な運命を辿ることになったこの展示が問題視されたのは、国益を棄損しかねない内容にもかかわらず、県から約6億円、名古屋市から約2億円、そして文化庁から約7800万円という多額の公金が投入されていることだった(不適切な展示物があったとして名古屋市は分担金支払い拒否、文化庁の支援金に関しては後日、不交付処理が行われた)。
当時、不適切とされたのは前出の「平和の少女像」に加えて「重重―中国に残された朝鮮人日本軍『慰安婦』の女性たち」、そして「遠近を抱えてPartII」の3作品である。
増え続ける慰安婦像
それぞれについて、ざっと説明しておこう。
「平和の少女像」あるいは慰安婦像は韓国内だけでなく世界各国に設置されている。作者はキム・ソギョン、キム・ウンソンのキム夫妻。2015年の日韓合意でこれら慰安婦像の撤去などが合意されたにも関わらず、韓国側は撤去するどころか設置数を増やし続けている。2012年には東京都美術館でのJAALA国際交流展で慰安婦像のミニチュアが展示されたが、開催4日目に同館の運営要綱に抵触するとして撤去された経緯がある。
少し話は逸れるが、慰安婦像の作者であるキム夫妻については先頃、彼らが制作した徴用工像に関する訴訟に判決が下った。「夫妻が作ったテジョン市内にある徴用工像のモデルは日本人で、我々の先祖だと言うのは歴史の歪曲だ」と主張する地元市議に対し、キム夫妻は名誉を毀損されたとして損害賠償請求を起こしていたのだが、裁判所は市議の主張に「真実相当性」を認めた。今後は、キム夫妻が作った慰安婦像の真実相当性も問われることになるかもしれない。
話を戻そう。続く「重重―中国に残された朝鮮人日本軍『慰安婦』の女性たち」という作品も、慰安婦問題に関連した作品で、こちらは元慰安婦だとされている女性の写真で構成されている。先の合意で慰安婦問題は、“最終的かつ不可逆的”に解決したはずであった。しかし、それが文在寅政権になって一方的に破棄され、現在に至るまで日韓の国家間問題として尾を引いている。慰安婦像や元慰安婦とされる女性の写真を日本国内で展示するこの行為は、日韓の関係悪化を象徴するものと言えるだろう。
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