出戻りの山口俊を巨人は獲得すべきではない【柴田勲のセブンアイズ】

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 ここ1週間、巨人に関するニュースが結構多かった。交流戦は西武、日本ハムを相手に2勝2敗2分だった。1日、3日の西武戦は序盤リードしながらも、最後に追いつかれて引き分けた。西武が底力を見せたとも言えるけどもったいない。負けに等しい引き分けとなってしまった。

 首位を行く阪神がオリックス、ソフトバンクに2勝4敗と負け越したこともあってゲーム差は交流戦前の4.5から3.5に。阪神に走られてゲーム差が6、7と開いたら、さすがにきつくなる。ケガ人が続出して苦しいチーム状況だが、いまはいるメンバーで頑張っていくしかない。

 でもまあ、驚いたのが山口俊の巨人復帰が濃厚になったことだ。ご存じのように山口は2019年オフにポスティング制度(入札制度)を使ってメジャーに移籍した。山口は16年のオフ、DeNAから巨人にFA移籍した。巨人はその交渉の際に時期を確定しない形で同制度を容認したという。原辰徳監督も知らなかった。

 当時、私は“密約”のようなものだ、こう記した記憶がある。これが悪い前例になる可能性があるとも。

 今度はメジャーで通用しなかったので帰ってくるとか。(※1)ああいう形で出て行った選手である。「メジャーでダメだったら戻っておいで」。こんな“密約”でもあったのかどうか。それはわからないが、獲得するべきでないと思う。節操がない。出たり入ったり…以前の巨人なら考えられなかった。

「武士は食わねど高楊枝」というが、巨人のいまは「背に腹は代えられない」ということなのだろう。先発投手のみならず投手陣全体が厳しい。いくらかでも戦力になる投手が欲しい。だが、それにしても…。巨人も変わった。こう思うね。

 山口の話はこれくらいにしたい。菅野智之が6日の日本ハム戦で約1カ月ぶりにマウンドに立った。右ヒジの違和感で出場選手登録を抹消されていたが、5回を90球、3安打2失点、6奪三振で無四球、投球を見ている限り、状態はよさそうだし、もう大丈夫だ。

 ただ、6日は立ち上がりが惜しかった。1回に先頭の五十幡亮汰に2ボールから変化球を右前打された。相手は新人である。本来、格が違う。抑えて当然だが、さらに二盗を決められた。で、1死三塁から近藤健介の内野ゴロで先制点を許した。2回には王柏融に真ん中のスライダーを左中間スタンドに運ばれた。試合の流れを日本ハムに渡した格好となった。

 菅野らしさを見せてはくれたが、やはり気になるのは変化球の多さだ。いまは変化球が7割、真っすぐが3割といったところだ。変化球主体で真っすぐを見せ球にしている。真っすぐ7割、変化球を3割にして投球の組み立てを考えた方がいい。

 投球の基本は内、外角への低めの真っすぐだ。特に大事なのが外角低めだ。ところが変化球主体だから、いざ真っすぐを決めようと思ってもうまくいかない。高めに浮く。6日は外角低めへの真っすぐで、これはいいなと思ったのは1球だった。

 菅野に「投手にとって基本のボールはなんだ」と聞くと、「アウトコースいっぱい、低めの真っすぐです」と答える。本人はもちろん、分かっている。でも、できていない。省エネでいきたい。打たれたくない。こんな気持ちがあるのか。だが、いまのままだとかわす投手になる。迫力がなくなる。もっと力強い菅野が見たい。6日は1カ月ぶりの実戦登板ということで手探りの部分もあったろう。そういった意味でも次回の登板に期待である。

 不振(※2)を極めていた丸佳浩が2軍落ちした。原監督の方から気分転換でと言ったのか、それとも丸本人がこのままではチームに迷惑をかける、ファームで打ち込ませてくださいと申し出たのか。そこらへんの事情は不明だが、ひとつの決断ではある。

 今季の丸、打席に立つ姿が小さく見える。姿勢がよくない、猫背と言っていいのか。不振の時はどうしても身体をドーンと使いたくなる。上体に力が入る。そうなるとヘッドが出てこない。差し込まれる。

 こんな時は身体を止めてヘッドを出す。走らせる。丸はいま、試行錯誤していることだろう。6日には長嶋(茂雄)さんが読売ジャイアンツ球場を訪問して丸を激励したという。まだ先は長い。焦らずじっくりと。1軍に帰ってきた姿を楽しみにしている。

 右手親指を骨折していた坂本勇人の復帰が近そうだ。6日にはイースタン・西武戦(G球場)に出場し二塁打を放った。もう打撃の方は大丈夫だと思う。左太もも裏の違和感でリハビリ中の梶谷隆幸とは違って手である。走り込みもできているはずだ。

 8日からはオリックス戦(京セラドーム大阪)、千葉ロッテ(ZOZOマリンスタジアム)との6連戦だ(※3)。パ・リーグの本拠地ではDHが使える。坂本には出てほしいけど、さてどうなるか。とにかく阪神に引き離されないようにチーム一丸で戦ってほしい。

 ※1 ブルージェイズとは2年総額635万ドル(約7億円)で契約。渡米1年目の昨季は主に敗戦処理で17試合に登板。2勝4敗、防御率8.06。今年2月、キャンプイン直前にブ軍を自由契約となる。ジャイアンツにマイナー契約で入団。今季は5試合で0勝3敗、防御率6.17。今後、昇格の見込みがないと判断したようだ。山口は5日に帰国、自主隔離期間終了後に巨人は入団交渉に入ると見られる。

 ※2 今季は40試合に出場、打率.227、4本塁打、8打点。

 ※3 巨人の交流戦でのオリックス戦は通算33勝23敗3分、同ロッテ戦は23勝33敗3分。2019年は両チームに2勝1敗と勝ち越している。

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月8日掲載

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