事件現場清掃人は見た “山谷アパート”で亡くなった「20代男性」の信じられない“死因”

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10数日間食事なし

 生ごみなどをゴミ袋に入れ、一通り清掃を終えた高江洲氏は、男性に痩せている理由を問うてみた。

「十数日間、食事をしていないというのです。驚いて、私と知人は顔を見合わせました。2000円ずつ出し合って、『これで飯を食え』と言って彼に渡しました。すごく喜ぶ彼に『食べた弁当はちゃんとゴミとして出すんだぞ』と言うと、『分かりました』と答えました」

 高江洲氏は、知人と部屋を後にした。ところがその2週間後、彼のもとにショッキングなニュースが届く。

「不動産屋の知人が男性に電話をしても出ないので部屋に行ったところ、男性は倒れていたそうです。すぐに病院に搬送されるも、死亡が確認されました。死因は餓死だったそうです」

 高江洲氏は、今度は亡くなった男性の特殊清掃を依頼されたという。

「男性はあまりにも痩せていたので、体液も出ていませんでした。遺品を整理するだけで作業はすぐに終わりました。後から聞くと、彼は中学を卒業すると、すぐ就職したそうです。それから十数年間、ずっとこの部屋に住み続けていたといいます。ミュージシャンになる夢を抱いていたのでしょう。ただ病弱で、仕事があまりできなかったといいます。それで収入がなくなり、家賃も滞り、最期は餓死したのです」

 高江洲氏は、知り合いの特殊清掃はできるだけ避けるようにしている。

「やはり、知人の遺品整理は色々と思い出してしまうので辛いものがあります。男性とは1度しか会っていませんが、言葉を交わした間柄ですから、厳しいものがありました。彼の死は、私の心に重くのしかかりました」

デイリー新潮取材班

2021年6月8日掲載

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