尾身会長の発言が“過激化”した理由とは? 菅政権の五輪有観客・待望発言が引き金に

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うまく伝わらない焦りが強く

 取材する政治部記者によると、

「尾身さんは世界のパンデミックと戦ってきた人で、政治のことをよく理解している人です。自身の発言や発信で五輪を中止させようとか、その交渉材料にするつもりはもちろんありません。むしろ五輪とはあまり関係なく、発信するメッセージがうまく伝わって行かないことに焦りのようなものを強く感じていたようです。3回目の緊急事態宣言が延長された5月12日以降から、それは目立っていったと言います」

 それをなぞるような対談が5月25日に行われていた。尾身氏はお笑いコンビEXITのりんたろー。とNHKの番組で向かい合い、感染者の多くを占め、対策のカギを握る「若い世代」にメッセージを届けられていないことへの悩みを吐露。

 会見などを通じて「感染リスクの高い5つの場面」について根気よく言及してきたと伝えると、りんたろー。は「5つの場面、聞いたことがないですね。逆にどういったところで発信されてたんですか?」と答える。以下、その後のやりとりである。

尾身「記者会見で(発信していました)。若者は、テレビのニュースなんか見ないっていうことですかね」

りんたろー。「そうですね。大事なことで1年間言い続けていても、ここまで届いてないって、何か悲しいというか切ないというか。やっぱり興味深いコンテンツが増えすぎている。あまりこちらが求めなくても入ってくるものが多いというか、だからかもしれないですね。でも、これだけニュースでやってても、緊急事態宣言が出てるのか出てないのか知らない子も多いですね」

尾身「ああ…」

辞めると政権が吹っ飛ぶ

 先の政治部記者が打ち明ける。

「そうですね、この対談は結構話題になりましたね。ちょうどその後くらいから、大会組織委員会の橋本会長が、“多くのチケットホルダーからできる限り観戦したい要望もある。今、宣言下でもさまざまなスポーツが客を入れて行われている。検証しながら、どのように理解をしてもらえるかが重要”などとインタビューに答えたり、組織委が、観客全員に陰性証明書かワクチンの接種証明書の提示を求めることを条件に有観客開催について政府と調整していることが報じられたりしました。その辺りが尾身さんを刺激し、ここ最近の五輪への言及につながったことは間違いないようです」

 観客を入れるのか入れないのか、入れるとしたら50%程度なのかというのは6月下旬まで決まらないと見られる。

「ただ、主催・運営側としてはそれまで手をこまねいているわけには行かず、無観客・有観客どちらに転んでも良いように準備する必要があります。当然ですが、無観客を想定していると有観客で決まった場合に対応できませんから有観客前提で準備する部分が多々あり、それに関係するところから情報が漏れていることはあります」(同)

 前出デスクに総括してもらうと、

「世間では五輪とかその後の解散総選挙とか自民党総裁選までが話題になることばかりですが、永田町では来年の参院選までを見据えた動きをしています。もちろんその際もコロナや経済対策などが最大の争点となりますから、尾身さんはキーマンであり続ける。辞められてしまうと政権が吹っ飛ぶことになり、菅首相もそれをわかっていないはずがない。国会で“国民の命と健康を守るのは私の責務だ。五輪を優先させることはない”と答弁したのはその証拠でしょう」

デイリー新潮取材班

2021年6月7日掲載

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