菅田将暉、有村架純、仲野太賀、神木隆之介ら人気・実力派が集ったドラマ「コントが始まる」
女性陣の描き方のおかげで
有村架純が演じるのはいろいろと屈折した中浜里穂子の役だ。大学を卒業して大手企業に就職したものの、自分とは無関係のミスの責任をとらされ、社内で孤立。恋人に甲斐甲斐しく尽くしていたものの、彼が他の女性と結婚するための下調べ係に過ぎなかったと知り、心が折れる。家から出ず、食事もとらず、瀕死の状態で妹に助けられた過去がある。
今はファミレスのアルバイトだが、そこで出会ったマクベスに興味を抱き、次第にのめりこんでいく。3人とは近所の友人に昇格するも、あまりにマニアックなファンであり、真面目で話が長いため、やや距離をおかれるタイプだ。真面目な優等生で集団や組織においてラインに乗ったように見えても、その不器用さや純粋さゆえに、生き馬の目を抜く世界では排除されてしまう。こういう女性いたなぁ。心折れて深爪になるのが中年に入ってからだと、そりゃもう大変よ。
むしろ心配なのは、古川琴音が演じる妹・つむぎのほうだ。気働きができて、面倒見がよくて、困っている人を助けずにはいられない性分。高校時代は野球部で伝説のマネージャーと崇め奉られたが、自身はそこで燃え尽きてしまう。やりたいことも目標もなく、今はスナックで働いている。彼女の自己分析が鋭すぎてエグイ。自分が人を助けるのは、「誰かに頼りにされたり、感謝されると自分の存在意義が簡単に保証されるし、生きている罪悪感が少しだけ和らぐから」。そして「みんなは騙されている。私はただのずるい女だ」と心の中で吐き捨てる。
あー、この自己評価の低さはちょっと闇が深そうね。琴音は「賢すぎるがゆえに素直には育っていない女子」を演じさせたらピカイチだな。この姉妹に本当の意味での共感や同情はできないが、できないなりにふっと思いを寄せてしまう。深爪姉妹の存在は、意外と大きかった。
最後にもうひとり。深爪ではないが、自己分析できる女がいる。潤平の彼女・岸倉奈津美だ。演じるのは芳根京子。製薬会社の広報部に勤務するエリートだが、マクベスが解散することを知って、心の中で安堵する。「芸人を続けていいよ、と言ってあげる優しい女でいたかっただけ」「売れない芸人の彼氏を支えてきた自分に酔っているだけなのかもしれない」と自嘲する。芳根の心情の吐露はとても重要だ。夢と希望と情熱だけではメシ食っていけませんもんねぇ。支える側にもそりゃあ愚痴も打算もありますわよねぇ。愛だけじゃない女の腹黒さが見えてホッとした。
芸人の世界は基本的にホモソーシャルなのであまり魅力を感じないのだが、女性陣の描き方のおかげで興味を失わずに最後まで見届けたいと思わされている。
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