「白鵬は制度を悪用している」 94歳の最古参相撲記者が引退勧告
大関・照ノ富士の連覇で盛り上がった大相撲夏場所。が、その大関も3敗を喫するなど、横綱不在の場所は低調な結果に終わった。94歳の最古参相撲記者が、その元凶たる横綱・白鵬に「引退」を勧告する。
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「今の白鵬は“横綱は降格できない”という制度を悪用して、のうのうとその地位に留まっているだけ。即刻辞めるべきですよ」
と憤るのは、東京相撲記者クラブ会友の原和男氏。
「彼が12回目に優勝したときだったかな。得意気に“双葉山に並びましたよ”と言ってきたことがありました。優勝回数で並んだということでしょうが、品格の部分では足元にも及ばない。“あなたと双葉山の間には天地ほどの差がある。全く及ばないよ”と言うと、むっつりとして去っていきましたね」
原氏は1926年生まれ。47年にNHKに入局し、文化放送、日本テレビと場を変えながら「栃若」「柏鵬」時代など大相撲全盛期に実況で活躍。「相撲アナ三羽烏」の一人として知られた。
94歳の今も矍鑠(かくしゃく)として土俵に目を光らせる原氏を憤慨させるのは、白鵬の傍若無人ぶり。現在途中休場を含め、6場所連続休場中。横綱審議委員会からは注意決議を受けてもいる。同じく注意を受けた横綱・鶴竜が引退したのもどこ吹く風、土俵にしがみついているのである。
“俺はやったぞ”
「横綱とは、一言で言えば力士の権威の象徴です」
と原氏が続ける。
「だからこそ降格できない制度になっている。つまり、自らがその権威を守るに値しない人間であると判断した場合には、潔く辞めなければいけないのです。1年間も土俵に上がれない、上がろうとしない力士が務めてよいものではない」
以下は名横綱と言われた栃錦が大関時代の逸話。
「ある日、栃錦に頼まれて、師匠の元横綱・栃木山との酒席にお付き合いしたことがありました。その席で師匠は彼の将来を念頭に“いいか、横綱になるというのは名誉なことだ。だがな、なった後は髷を切るだけだ。その覚悟を持て”と心構えを語ったのです」
横綱となった栃錦はライバル・若乃花と「栃若時代」を築くが、60年の夏場所、初日から連敗した時点で引退を表明する。
「でもその前の場所で、栃錦は初日から勝ちっぱなし、若乃花と千秋楽で全勝対決したほどで、まだまだ強かった。しかし、これ以上負けては綱の名を汚すと引退を決めたのです。“早過ぎませんか”と聞いた私に横綱は“地位ではなく権威を守らねばならんのです”と返しました。師匠の言いつけを固く守ったのでしょう」
その後の時代を担った大鵬も同様だという。
「大鵬の連勝がストップしたときのこと。46連勝目をかけた対戦で戸田という力士に押し出されてしまったのですが、実はその前に戸田の足が蛇の目をかすっていたんです。『世紀の大誤審』と言われましたが、当の大鵬は“あんなに押し込まれ、逃げるような相撲は横綱の相撲ではない”と異議を唱えませんでした」
いずれも品位と権威の護持に努めた横綱の姿だけに、どれだけ休場しても恬(てん)として恥じない白鵬との対比が鮮明になるのだ。
「そもそも相撲道を理解していない。懸賞金をもらう際、力士は手刀を切りますよね。あれは勝負の神様への感謝を表す神事なのです。しかし白鵬はこともあろうに“俺はやったぞ”と手を高く掲げることがある。神を冒涜していますよ。彼の不幸は、栃木山のように厳しく指導してくれる親方もいないこと。このままでは綱の名は汚れるばかりだね」
神聖な土俵も泣いている。