適応障害で休養発表の深田恭子 「何を演じても深キョン」が的外れだと思うワケ
適応障害になる人の多くは、適応障害と診断がつくまで人に弱みを見せられない人なのだと思う。真面目で責任感が強く、自分のできることは自分でやろうと抱え込んでしまう人。深キョンこと深田恭子さんも、きっとその一人だったのだ。体調が思わしくない中でも、先日の熊本復興支援イベントへの出席の意志は固かったという。おっとりふんわりした見た目やキャラとは逆の、ストイックで義理堅い一面がうかがえる。
深キョンは実は遅咲きの人だと思うのは私だけだろうか。13歳でホリプロスカウトキャラバンでグランプリ。15歳でドラマ「神様、もう少しだけ」のヒロインでブレイク。十分に若くしてスターだったという声は多いだろう。でも、彼女の見た目やキャラは、当時の主流派とは少しズレていたように思うのだ。
当時のドラマを見てみると、華奢で透明感のある「清純派」が主流を占めていたのがわかる。例えば、「神様~」の前年に放送された「ビーチボーイズ」の広末涼子さん。「ひとつ屋根の下」「星の金貨」の酒井法子さんも大人気。「愛していると言ってくれ」など、準ヒロイン役を多く務めた矢田亜希子さんも注目を集めだした頃だ。また、深キョンの同級生である加藤あいさんも、1998年から2002年にかけてCMに引っ張りだこだった。
対して深キョンは、透明感というよりは生命力を強く感じさせるタイプだったのではないか。「神様~」で演じた細眉で浅黒い肌のコギャル姿。水泳をやっていたことがうなずけるしっかりした肩幅。26.5cmの足。合う靴がなかなか無く、事務所の先輩である和田アキ子さんにもらっていたらしい。今でこそ憧れのスタイルと言われる彼女だが、体型を揶揄する声もあったのは事実だ。
加えて本人のキャラも、万人受けするとは言い難かった。自分のことを「恭子は~」と呼び、甘えるようなしゃべり方。「前世はイルカ」「私はマリー・アントワネットの生まれ変わり」とニコニコしながら語っていたのを思い出す。ちなみに華原朋美さんファンを公言していた深キョン。マリー・アントワネットといい、浮世離れしたお姫様っぽい女性が好きなのかもしれない。
だからなのか、彼女も非現実的な役だと輝く。映画「下妻物語」でのロリータ役に「ヤッターマン」でのドロンジョ役。ドラマは「南くんの恋人」や「富豪刑事」「ルパンの娘」といった原作モノ、しかもちょっと変わった設定のヒロイン。大学生や主婦、教師など等身大の女性を演じたこともあるが、どうもイロモノ的な役柄の方が記憶に残ってしまう。可愛いから許しちゃう、ではなく、深キョンだから許しちゃうと言わしめるパワー。「いつもキョトン顔」「ぶりっこおばさん」と酷評されることもあるが、逆に深キョンの当たり役をすんなりこなせる女優はそうそういないのは確かである。深キョンの弱みが演技力なのではなく、演技力すら蹴散らす「華」のある存在感が強み、ということだ。
特筆すべきは演技力より華のある存在感 ハッピーエンドしか似合わない特異な女性タレント
演技力を取り沙汰される深キョンだが、実は映画祭や日本アカデミー賞での受賞経験もある。同じホリプロの綾瀬はるかさんや石原さとみさんとも遜色ない経歴だ。でも彼女たち二人と唯一違う点を挙げるならば、NHK大河ないし朝ドラの主演経験がないことである。視聴者を長期間惹きつけられる、抑制の効いた演技やシリアスさには欠けるということだろうか。いくつになっても愛らしい見た目や声は、見ている側も毒気を抜かれてしまう。でもだからこそ、少々ぶっ飛んだ喜劇にはこれ以上ないくらいにハマるのだろう。
ボディメイクに励み、サーフィンにも30を過ぎて挑戦。若々しい心身は“奇跡のアラフォー”と男女双方から絶賛された深キョン。思えば水泳にピアノ、サーフィンなど、彼女の趣味や特技は一人でできるものばかりだ。誰にも弱さを見せず、ひとりコツコツと日々を重ねていくことを心がけていたのではないだろうか。「透明感」の代名詞たる女優たちが、奔放な生活やスキャンダルで話題になりながらも、今もたくましく芸能界を生きているのとは対照的だ。
深キョンの頑張り屋で人に頼らない真面目な性格が、ハッピーエンドにしかハマれない華やかな存在感を生み出した。でも同時に、その真面目さが適応障害も生んでしまったのではないか。さまざまな憶測も飛び交っているが、彼女が本当のことを言うことはないだろう。適応障害になるまで自分を追い詰める人が、むやみに心の内を明かしたり、誰かに重荷を負わせようとしたりするとは思えない。今はしっかり休むことに専念してほしい。日本一ハッピーエンドが似合う女優・深キョンには、やっぱり笑顔が似合うから。