両親が不倫していた家庭で育った39歳男性 自身が「ママ友」と関係を持って起きた異変

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“ママ友”とも関係を…

 そんな過去があるからこそ、結婚8年目にして自分がしでかした「一夜の過ち」について、亮輔さんは自分を許せないと感じていた。

「妻に話そうと何度も思いました。妻に対して誠実であると決意して結婚したのだから。それに僕はおそらく、自分が親と同じようになることを恐れていたんだと思います。今、率直に話して罰せられればもう繰り返すこともないはずだと考えた。だけど妻が傷つくことを考えたら、やはり話せませんでした」

 話せなかっただけではなく、それから1年あまり後、今度は子どもの友人の母親、つまり“ママ友”である美佳さんとも「過ち」をおかした。

「美佳さんの場合は、ノリや勢いではなく、じっくり友だちづきあいをした上でもっと深い仲になりたいと僕から誘いました。子どもの友だちの母親だからバレやすいという危機感はあった。でも自分を止めることができなかった」

 とはいえ、自分は親とは違う。子どもをカモフラージュにはしない。そうは思ったが、子どもをカモフラージュにしていた親の気持ちが、少しわかるような気がしたのも確かだと言う。

「そのとき思ったんですよ。嫌らしい言い方かもしれないけど、僕は結婚したかったから妻を選んだ。妻は伴侶として最高の女性です。でも美佳とは、妻としてとか恋人としてとか、そういうカテゴライズされた関係ではない、人間同士、ただの男と女としてつきあいたかった」

 つまりは初めて“恋”に落ちたのだ。美佳さんのすべてを知りたいと願ったが、そううまくはいかない。

「せめてお茶でもと、何度かカフェには行きましたが、あくまで子どもの親同士としてでしたね」

 美佳さんは共働きでバリバリのキャリアウーマンだ。外資系の企業をいくつか渡り歩いた「強者」だという。それでいて物腰は柔らかく、視野は広く、穏やかな性格で、亮輔さんから見ると、実業家の母とも専業主婦の妻とも違うタイプだった。だから惹かれたのかもしれない。

 ある日、代休をとった亮輔さんは自転車で公園へ出かけた。美佳さんへの悶々とした気持ちを抱えて、公園のサイクリングロードをひた走った。そしてベンチで休んでいると、すぐ近くに美佳さんがいるのを見つけたのだ。

「彼女はひとりで本を読んでいました。僕を見てびっくりしたみたい。彼女も多忙な日が続いてようやく一段落して休みをとったんだそうです。そのままカフェに行ってランチして……。今日を逃したくないという思いが強かった。僕はあなたがいないこれからの人生を考えることができないと言いました」

 結婚しているのに何を言ってるのと笑われたが、彼はめげなかった。人の妻としてのあなたではない、あなた個人と僕個人の問題、関わっていきたいんだと真摯に訴えた。

「彼女、呆れたように笑っていましたが、ふっと真顔になって『あなたは絶対に、誰にもバレないようにできるの?』と。もちろんだと言いました」

 暗黙の共犯意識が生まれた瞬間だ。それから約3年、ふたりの関係は今も密かに続いている。

「罪の意識というのは慣れとともに薄れていくんですね。今は罪悪感はほとんどありません。同時になぜかずっと心にあった親へのわだかまりも薄くなっていきました。あんな親だから、僕は浮気などしないと決めていたのに、その自分が結局、似たようなことをしている。親の淫らな血のせいかと思ったこともあるけど、そういうことじゃないんですね。人間、生きていればいろいろなことがある。恋したら止められないこともある。自分を正当化したいからかもしれないけど……」

 今年の母の日、彼は大人になってから初めて母にプレゼントを贈った。古希を迎えた母は、今も元気に仕事に遊びにと飛び回っているようだ。母からのメッセージには、「ありがとう。亮輔はママの誇りだよ」の文字とともにハートマークが飛び散っていた。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月2日掲載

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