「ウマ娘」大ヒットで20代の競馬ファン増加中 “ハルウララ”ファーム見学は予約でいっぱいに

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 歴代の名馬たちを美少女にしたCygamesのスマートフォン・パソコン向けゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、「ウマ娘」)が一大ブームとなっている。

 今年2月24日にスマートフォンでリリースされると、5月14日までに700万ダウンロードを突破。モバイルアプリ市場調査会社「センサータワー」の調査によれば、3月だけで1億3660万ドル(約149億円)を稼ぎだし、4月のモバイルゲーム売上ランキングでは日本国内だけの配信にもかかわらず世界3位にランクインとお化けコンテンツぶりを見せている。

「ウマ娘」はトウカイテイオー、スペシャルウィークなど歴代名馬をモデルとした美少女“ウマ娘”を育成するゲーム。ストーリーは史実のレースをベースとしており、オグリキャップとタマモクロス、ウオッカとダイワスカーレットといったライバルとの対決が描かれる。このため、ゲームを通して競馬に興味を持った若い世代がYouTubeなどにアップされた過去のレース動画を勉強したり、リアルな競馬への興味を持つケースも増えている。

 5月23日に開催されたオークスでは勝ち馬のユーバーレーベンが、ゲームにも登場するゴールドシップの産駒であることからTwitterのトレンドに「ゴールドシップ」が浮上。過去の名馬の知名度が上がることが、“ブラッドスポーツ”と呼ばれる競馬の奥深さに触れる機会ともなっている。

 実際、データからも若い競馬ファンが増えていることがわかる。

 インターネット行動ログ分析ツール「Dockpit」を使い、日本中央競馬会(JRA)の公式サイトの年代別アクセスを見ると、「ウマ娘」のリリース直後の2021年3月から一気に20代ユーザーのアクセスが急増。4月には40代に次ぐ全世代2位とアクセスが一気に伸びている【図1】。

 またSNSでは「ウマ娘」をきっかけに馬券を購入し始めたという声が多い。「Dockpit」を使ってJRAのインターネット投票サービス「JRA IPAT」を調べると、こちらも3月を機に20代ユーザーのアクセスが増加し、4月には30代、60代とほぼ同じ数まで増えている【図2】。

 ほかの年代では20代ほどの変化はなく、またこちらも3月から変化があることから「ウマ娘」の効果はあったと見るのが自然だろう。

 実際、競馬に携わる人からも「ウマ娘」による競馬ブームの声は上がっている。

引退馬イベントの寄付に3500万円

 レースを引退した競走馬を支援する認定NPO法人「引退馬協会」の代表理事を務める沼田恭子さんは「ウマ娘によって、明らかに若い競馬ファンは増えています。グッズの売り上げも上がっていますし、ホームページに来る方々もたくさん増えています」と話す。

 それを顕著に表すのが今年4月から5月まで行われたナイスネイチャのバースデードネーションだ。誕生日のプレゼント代わりに引退馬のための寄贈をお願いするキャンペーンだが、ナイスネイチャをモデルとするキャラが「ウマ娘」に登場したため一気に注目度がアップ。昨年は400人だった寄付への参加者が、今年は1万6000人と一気に増加。3500万円を超える寄付が集まった。

「これまで引退馬の支援をしてくださる方はとてもコアな方でしたが『ウマ娘』で変わりました。金額もさることながら、人数が一気に増えました。ナイスネイチャのキャラが好きでそこから入ってくれた方がたくさんいた。寄付をしてくれた方は『長生きしてね』『同じ年ですから頑張ってね』など優しいコメントを残してくださっています」(沼田さん)

 引退馬協会では馬の里親となり、会費や寄付などで支える「フォスターペアレント」という制度があるが、前述のナイスネイチャやタイキシャトル、メイショウドトウといった「ウマ娘」に登場するキャラのモデル馬に里親の希望者が殺到し、現在は募集を停止する事態となっている。

 引退馬を生かすためには多くの金銭がかかるが、寄付を集めるにも世間の関心はけして高くはなかった。そこに突然差した光が「ウマ娘」だった。

「『ウマ娘』をきっかけに若いファンだけでなく、一度離れた競馬ファンが再び競馬を応援するようになったと聞いています。グッズ収入のお金はゲームに登場していない引退馬にも回ります。たくさんの方がゲームを通して、引退馬の存在を知ってくださったことはとても大きいことです」(沼田さん)

 馬を預かる牧場にも多くのファンが訪れている。ハルウララを管理している千葉県にあるマーサファームの斉藤時枝さんは次のように話す。

「3月の初め頃から見学したいという人が増えて、今は本当に毎日忙しいです。予約で人数を制限していますが、6月の土日の見学はすでに埋まっています。年代は若い世代が多いですね。ほぼウマ娘をきっかけに来ていますし、若い競馬ファンは増えていると思います」

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