巨人がようやくソフトバンクに1勝 おかけで残った心配のタネ【柴田勲のセブンアイズ】

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 巨人にとっては実に大きな「1勝」となった。30日のソフトバンク戦(福岡PayPayドーム)を1点差で振り切った。同戦の公式戦連敗記録(オープン戦を含めると14)を11で止めた。

 前回の今コラムで楽天、ソフトバンク6連戦を3勝3敗なら御の字、2勝4敗、いや1勝5敗もあり得ると記した。現在、パ・リーグの首位争いをしている両チームとの対戦である。おまけにエース・菅野智之、主将・坂本勇人、さらに梶谷隆幸を故障で欠いている。正直、どうなるかと思っていた。

 26日の楽天戦(東京ドーム)で則本昂大をKOしたのが御の字につながった。効いた。3回まで1安打に抑えられていたが4回に入って打線が一発攻勢。岡本和真が逆転の13号2ラン、若林晃弘も2ランを放つと大城卓三も中堅右に運んだ。やはり主砲の一発は打線を奮い立たせる。

 30日の勝利も初回にジャスティン・スモークの2点適時打で先制した。和田毅の低めのチェンジアップをうまく捉えて中前に運んだ。もっとも2回裏には同点とされて嫌な雰囲気となった。というのも28、29日も巨人が初回に2点を先制していたものの、ソフトバンクの本塁打攻勢でひっくり返されていたからだ。

 でもこの日は違った。5回に岡本和が中堅に勝ち越し弾、さらに8回にはスモークが右翼へ一発。1点差だっただけにこれは効果的だった。

 それにしても原辰徳監督は連敗脱出へ必死だった。戸郷翔征を中4日で起用、28日に先発した畠世周をベンチ入りさせてリリーフ待機、打撃不振の丸佳浩をスタメンから外して石川慎吾を使った。丸はコロナ禍から体調を配慮してのスタメン落ちがあったものの不振が原因は初めてではないか。

 これは原監督の判断だ。現状、仕方がないということだろう。ちょっと休ませて気分転換を図らせる。いい休養になったと思いたい。

 原監督、6回からは6投手を投入した。ピンチを迎えるたびに最良の手を求めリリーフ投手をマウンドに送った。9回は8回から登板していた中川皓太に託した。1死一、二塁から長谷川勇也に適時打を浴びて1点差に迫られてなお2死一、二塁からルビー・デラロサを投入して勝利をつかんだ。なんとか投手陣が粘った。

 ここで負けたら終わり。こんな切羽詰まった思いを感じさせる采配だった。連敗は止めたものの、これで苦手意識払拭かといったら、そんな単純なものではないと思う。

 ソフトバンクもエース・千賀滉大は左足首の故障で長期離脱、抑えの森唯斗は左ヒジ手術で復帰未定、ジュリスベル・グラシアルは右手の負傷、リバン・モイネロ、アルフレド・デスパイネは東京五輪米大陸予選にキューバ代表として出場するため離脱中だ。

 決して万全なチーム状況ではないが、巨人は見下げられているというか、言葉は悪いがなめられている。こんな感じを受けた。

 打者たちは気持ちよさそうなフルスイングをしている。巨人投手陣は28、29日の2試合で本塁打9発を浴びている。計17失点。畠、それにエンジェル・サンチェスにせよ結果を先に考えて投げている。打たれたくない。こんな気持ちだからどうしても逃げの投球となる。変化球でかわそうとする。ソフトバンクの打者たちはそこに付け込んで振ってくる。

 ソフトバンクは交流戦の最初の相手、中日に0勝2敗1分と白星がなかった。中日のチーム防御率は12球団トップの2.92、ソフトバンクは強力な投手陣に手を焼いた。なにを言っても決め手は投手力だ。

 とにかくストライクを先行させて果敢に攻めていくことだ。同じようなことが打者にも言える。甘い球を見逃さない。ファーストストライクを振る。結果を先に考えてはダメだ。

 楽天、ソフトバンクの6連戦はきつかったと思う。毎度毎度余裕がなく、目一杯試合をやってきた。原監督以下首脳陣、選手たちはヘトヘトに疲れていると思う。

 私も覚えがあるけど、こんな時は反動が出やすい。6月1日からは西武、日本ハムを東京Dに迎えて6連戦か。2019年は両チームに2勝1敗と勝ち越している。通算成績も決して悪くない(※)が、油断することなく戦いに臨んでほしい。

 首位阪神とのゲーム差は4.5で交流戦前と変わらずだ。これが7、8ゲーム差になったらかなりきつくなる。

 冒頭で巨人の大きな1勝と記したが、阪神が28日の西武戦で挙げた1勝も大きかったと思う。新人の佐藤輝明が1試合3発の離れ業をやってのけたが、3本目は9回2死一、三塁からの勝ち越しの3ラン。勝利に直結した。

 阪神の快進撃が続くが、「佐藤効果」によるところ大だ。チーム全体が引っ張られている。新人の1試合3発は1958年の長嶋(茂雄)さん以来だという。この年、長嶋さんは途中から4番に座り本塁打と打点の2冠を獲得、新人王にも選ばれてリーグ優勝に貢献した。阪神の原動力・佐藤輝のこれからにますます注目である。(成績は5月31日現在)

 ※交流戦 西武とは通算35勝23敗1分
日本ハムは同31勝26敗2分

柴田勲(しばた・いさお)
1944年2月8日生まれ。神奈川県・横浜市出身。法政二高時代はエースで5番。60年夏、61年センバツで甲子園連覇を達成し、62年に巨人に投手で入団。外野手転向後は甘いマスクと赤い手袋をトレードマークに俊足堅守の日本人初スイッチヒッターとして巨人のV9を支えた。主に1番を任され、盗塁王6回、通算579盗塁はNPB歴代3位でセ・リーグ記録。80年の巨人在籍中に2000本安打を達成した。入団当初の背番号は「12」だったが、70年から「7」に変更、王貞治の「1」、長嶋茂雄の「3」とともに野球ファン憧れの番号となった。現在、日本プロ野球名球会副理事長を務める。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月1日掲載

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