広島・佐々岡監督は今季限りか 「不可解采配」「選手批判」…大きすぎる問題点

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 セ・リーグ3連覇から一転、過去2年間はBクラスに沈んでいる広島。今年も開幕から苦しい戦いが続き、さらに追い打ちをかけるように、5月20日には多くの選手、コーチが新型コロナウイルスの感染が判明。この影響で、予定されていた試合が延期となり、シーズン終盤には過密日程となることが予想される。あらゆる逆風が吹いているチームだが、昨年から大きな問題となっているのが佐々岡真司監督の不可解な采配だ。

“イニングまたぎ”の起用

 現役時代はプロ入り2年目の1991年に最多勝、最優秀防御率、MVPに輝くなどチームの優勝に大きく貢献。通算100勝100セーブを達成している名投手であり、監督就任前には投手コーチを任されていた。その経歴から期待されたのは、投手陣の立て直しだった。今のところ、その期待に応えられているとは言えない状況だ。昨年は森下暢仁、今年は栗林良吏、森浦大輔、大道温貴と抜擢したルーキーが結果を残しているのは、プラスに見えるかもしれない。

 その一方で気になるのが、起用法である。森下は、昨年登板した18試合のうち7試合で120球以上を投じており、最後には疲れから登板を回避してシーズンを終えている。シーズン終盤は優勝争いに絡んでいない消化試合だっただけに、球数の多さはとにかく気になった。今年は幸い「二年目のジンクス」に陥っていない森下だが、大学時代に故障歴があるだけに今後が心配だ。

 今年クローザーとして大活躍している栗林は、5月8日の中日戦で8回ワンアウト満塁の場面から登板しており、いわゆる“イニングまたぎ”の起用となっている。シーズン終盤の優勝を争う展開であれば、理解できなくもないが、5月上旬の段階で、しかもルーキーにこのような起用をするというのは疑問が残る。結果は、栗林が見事にピンチを脱出し、最終回も抑えて勝ちには繋がったが、仮に失敗していたら、その後のシーズンに大きな影響を与えていたことは間違いない。

 リーグ3連覇を支えた中崎翔太、フランスア、今村猛、一岡竜司といったリリーフ投手が軒並み故障や不調で一軍の戦力になっておらず、先発の大瀬良大地、野村祐輔も少し力が落ちてきているように見える。

 こうした状況だからこそ、若手に頑張ってもらうという考えもあるが、無理を重ねては、また同じ状況を招く可能性は高い。ピッチングコーチとして、ブルペンを任されていた立場にもかかわらず、投手陣の中長期的な立て直し策が見えてこないのは、大きな課題と言えるだろう。

得点数はリーグ5位

 もうひとつ気になるのが戦い方の一貫性の無さだ。昨年は前述したリリーフ陣が軒並み不在で投手が苦しいということはシーズン前にわかっており、佐々岡監督自身も「今年は打ち勝つしかない」というコメントを残していた。

 しかし、いざ開幕してみると、犠打を多用して1点をとりにいくような采配が非常に多かった。昨シーズンの犠打数81は、阪神に続いてリーグ2位の多さである。丸佳浩が巨人に移籍し、鈴木誠也にかかる負担が大きいという事情はあるものの、チーム打率や本塁打数は他の5球団と比べても決して悪い数字ではない。

 ただ、そのヒットや長打を生かせていないというのが現状だ。今シーズンも、チーム打率はリーグでトップだが、得点数は5位に沈んでいる(5月31日終了時点)。このあたりは、今年チームに復帰した河田雄祐ヘッドコーチの役割なのかもしれないが、招聘したのは佐々岡監督である。このあたりの野手に関するベンチワークが上手く機能していないことが大きな問題だろう。

 最後にもうひとつ。昨年から気になるのが、選手に対して非難するような佐々岡監督のコメントが目立つことだ。5月2日の阪神戦で負け投手となった野村に対してはバッサリ切り捨てるような発言を残し、翌日に野村を二軍に降格させた。また、他の試合でも、選手のミスに対して責めるような言葉が報道されることが多い。もちろん時には、選手に対して厳しく接することも必要だが、リーグ3連覇を達成したチームだけに、実績のある選手は多く、そのような選手への“過度な叱責”は逆効果となるのではないだろうか。

 このまま負け癖がつけば、再び暗黒時代に突入することが考えられる広島。チームの立て直しが進まなければ、“次の指揮官”を検討する必要も当然出てくるだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月1日掲載

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