事件現場清掃人は見た ゴミの山の上で亡くなっていた「50代女性」と息子の異様な関係
孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、ゴミの山の上で亡くなっていた50代女性のケースについて聞いた。
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特殊清掃の現場では、同居する人がいても“孤独死”となってしまうケースが稀にあるという。
「20代の男性から仕事の依頼がありました。ゴミの処理をして欲しいと言うのです」
と語るのは、高江洲氏。
「現場は、東京近郊にある古い一軒家でした。玄関のドアを開けると、室内には事件現場につきものの死臭が漂っていました。臭いの元となっていると思われる1階の奥の和室に行ってみると、信じられない光景を目にしました」
ゴミの山の上に蒲団
ゴミが部屋一面に山のように積み重なっていたという。
「本当にひどい状況でした。天井の高さは、一般的に2.4メートルありますが、その半分位の高さにまでゴミが積まれてあったのです。そしてさらに驚いたことに、ゴミの山の上に蒲団が敷かれていたんです。さすがの私もビックリしましたね」
蒲団には、遺体の痕跡があったという。高江洲氏は、男性に事情を聞いてみた。
「蒲団の上で50代の母親が亡くなっていたそうです。死後1週間経って発見されたそうです。父親はかなり前に亡くなり、男性は母親と2人暮らしでした。ところが5年ほど前から母親は男性とのコミュニケーションを一切拒絶し、決して自分の部屋に入れなかったそうです。そのため、遺体の発見が遅れたのです」
なぜ、親子はコミュケーションが全くなくなってしまったのか。
「男性は幼い頃、母親から虐待されていた。母親に反発することなく従っていたとのことでした。しかし、彼は母親に対して憎しみを抱いていたといいます。母親はそれを薄々気付いていたはず。いつしか彼女も息子を嫌うようになり、自分の部屋に入ることを禁じるようになった。結局、親子は互いに干渉せず、ひとつ屋根の下で別々の暮らしをしていたのです」
ところが、ある時母親の部屋から音がしなくなったという。
「トイレに行く時の足音も聞こえなくなった。男性が恐る恐る様子を見に部屋に行ってみると、母親は蒲団の上に横たわっていたといいます。しかし声をかけても動かない。そこで救急車を呼んだそうですが、すでに亡くなっていたわけです」
息子が同居していたのに、母親は「孤独死」したも同然である。
高江洲氏がゴミを処分していくと、さらに驚くべきものを発見した。
「ゴミの山の向こうの壁を見て、腰を抜かしそうになりました。蒲団があった周囲の壁には、この世を呪い、恨みを書きなぐった紙が一面に貼られてあったのです。一部は、壁に直接書き込まれていました」
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