緊急事態宣言下の東京から山形や秋田に“越境飲み”に行く人の心理状態

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コロナ感染が発生

「『この辺にどこかいい店がありませんか?』と訊いてきました。2人のうち1人は相当酔っていました。私は山形に出張で頻繁に訪れていますが、地元の人ほど飲み屋に詳しいわけではありません。答えに困っていると、男たちは自ら『東京では酒が飲めないから、山形まで来た』と話していました」(同・福島県の男性)

「本当に東京から来たのかな」と半信半疑だったが、後日、秋田県の在住者と雑談をしていると、「秋田県でも同じです」と言われたという。

「私の会社は秋田の金融機関とも取引があって、担当者と話す機会があったんです。山形でのエピソードを伝えると、『秋田にも東京の人がわざわざ酒を飲みに来ていますよ』と教えてくれました。確かに飲み屋街を歩いていると、福島でも山形でも『他県のお客さまはお断りします』と書いてある店が結構あるんですよ。やっぱり『越境飲み』で来る人が多いんでしょうね」

 しばらくして再び山形県の同じ街を訪れると、意外にも飲み屋街は閑散としていたという。

「特にスナックがどこも閉まっているんです。知っている居酒屋は開いていたので、そこで酒を飲みました。後でスナックの人に『近所でコロナ感染者が出たんだよ』と教えてくれました。そのために閉めた店が多かったんですね。あの東京の2人組が感染源かは分かりませんけれど、やっぱり東京の人は来てほしくないなと思ってしまいました」

福島県民も越境飲み!?

「越境飲み」は緊急事態宣言が出ていない福島県民でも見られるという。

「地元福島の店なら遠慮なく飲めますけど、それでも飽きるみたいですね。しかし、東北本線を使って宮城県や岩手県に出ると、出張で来ている知り合いに鉢合わせてしまうかもしれない。緊急事態宣言が出ているわけではないので、移動の自粛は求められていません。それでも顔を見られるのは嫌みたいで、知人に会う可能性が低い山形県や秋田県に出るそうです。『旅の恥はかき捨て』と言いますけど、思いっきりハメを外したいんでしょう」

 この男性は「越境飲み」をしてしまう人々の気持ちは理解できると言う。

「ずっと家で飲むのは我慢できないという気持ちは分かります。私だって出張先で飲んでいるわけですしね。ただ、都民の方がわざわざ山形や秋田まで飲みに来たと聞くと、ぎょっとします。テレビで毎日、東京の感染者数を見ていますから、感染拡大が怖いと思ってしまいます」

 昨年、緊急事態宣言が発令された際、パチンコ愛好家の行動が“社会問題”となった。大多数のパチンコ店が営業を自粛する中、一部が開店を強行。すると隣県などから愛好家が殺到した。信じられない数の行列がテレビに映し出されたのは記憶に新しい。

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