面従腹背の文在寅 ソウルに戻ると即、金正恩に“詫び状” 米国でも始まった「嫌韓」
非核化交渉で監獄逃れ
文在寅政権の焦りがひしひしと伝わって来る発言です。2022年5月の任期満了までに北朝鮮の非核化を巡り、何らかの結果を出さねばならない、とこの政権は思い詰めています。
よほどの功績を残さない限り、韓国の歴代大統領は次の政権に刑務所送りにされるからです。文在寅政権も李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)の元・前大統領をはじめ最高裁長官、保守政権時代の高官らを大量に起訴・収監したので、報復は免れません。
2022年3月の大統領選挙で保守が勝てば、あるいは左派でも現政権と仲の悪い李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事が勝てば、文在寅氏は獄につながれ、取り巻きも連座する可能性が極めて高い。
ところが肝心の北朝鮮が、非核化の第一歩となる対話に応じてくれるかはかなり怪しい。2018年に対話に応じたのに、韓国からカネが来なかったと怒っているからです。
そこで北朝鮮に対し文正仁理事長は「北朝鮮が話し合いに応じたら、協力事業を開始できる」と表明し「今度はちゃんとカネを送る」と約束したわけです。
――一度騙された北朝鮮が再び対話に応じるでしょうか?
鈴置:文正仁理事長も難しいと分かっています。そのため「思いきった行動に出る」と語ることで「もっと大きなプレゼントも考えているぞ」と、北の気を引いたのです。
――米国がそれを許すでしょうか?
鈴置:バイデン政権は反米左翼に点数を稼がせるつもりはないと思います。北朝鮮との対話は急がず、それにより来年に誕生する「南のまともな政権」と協議しながら北との交渉に挑めばよい、と考えているでしょう。文正仁理事長が悔しそうに言及した「政治の周期の不調和」はこれを指します。
贈り物は在韓米軍撤収
――「もっと大きなプレゼント」とは?
鈴置:「在韓米軍撤収」ではないかと思います。ただ、はっきりとそう言えば国民から大反対が起きます。そこで朝鮮戦争の終結を内外に示す「終戦宣言」、あるいは「平和協定の締結」というオブラートにくるむと思われます。
米国でも「平和協定」への懸念が語られています。アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のN・エバーシュタット(Nicholas Eberstadt)氏がNYTに寄稿した「Biden and Moon Are Getting North Korea Wrong」(5月26日)です。
エバーシュタット氏は米韓共同声明に盛り込まれた「朝鮮半島の恒久的な平和の確立」との文言を北朝鮮が悪用して「平和協定締結」→「在韓米軍撤収」に駒を進めるであろう、と警告しました。
共同声明が「北朝鮮の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」を謳ったことも、同様の結果をもたらすと指摘しました。後者は韓国に差しかけてきた米国の核の傘を取り払うことに同意した、と取られかねないからです。
見出しの「バイデンと文が北朝鮮を悪くする」からも分かるように、今回の米韓首脳会談は北を甘やかすだけと厳しく批判する論文です。結論は「北朝鮮の意向に従って動く韓国の左派政権とは手を切れ」でした。
・To reduce the North Korean threat, we will need a program we can undertake on our own, with like-minded international friends, that does not depend on Mr. Kim.
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