巨額の予算と利権の巣窟に不安…9月発足の「デジタル庁」に群がる“ITゼネコン”

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ほとんどが「ひも付き」

 だが、問題はデジタル庁に入る「民間人」だ。すでに非常勤の国家公務員として採用が始まっているが、今、手を上げているほとんどは「ひも付き」、つまり、NTTやNEC、富士通、日立製作所といった「ITゼネコン」と呼ばれる大手IT事業者や、その発注先のITシステム会社の社員だと言われている。事実、すでに採用されている非常勤職員には、転職するのではなく、システム会社に籍を置いたままになっている人たちがいる。

「うちの会社も送り込んでいますが、どこのシステム会社も同様です」

 と大手ITゼネコンの取締役は語る。

「もともと政府の仕事をたくさん請け負っていますが、デジタル庁になって発注スタイルがどう変わるのか、どこも注視しています」(同)

 巨額のIT予算の配分にデジタル庁はどう対応するのか、下手をすればITゼネコン外しが起きる可能性もある、と恐れているというのだ。

 現状、政府調達の一般競争入札では、業務を委託する場合、企業の「信用度」なども重視される。そのため、「資本金の額や従業員数、過去の実績の評価点を得るのは大手で、ITシステム会社に多いベンチャー企業などは参入の余地がほとんどない」(中堅IT会社の経営者)。

「しかし、優秀な技術者を抱えているのは中小のシステム会社が多いため、大手は自社が受注したものを下請けに出すのが一般的。中小の2次、3次下請けは当たり前です」(同)

 大手がITゼネコンと呼ばれるゆえんだ。

「大手の技術者はサラリーマンで、政府から仕事を取ってくるだけ。実際に作るのは下請けの個人事業主のような技術者です。大手に実際にシステムを組める人材はほとんどいません」

 と、ベンチャーIT会社の創業者は嘆く。昨年来、政府発注アプリなどで次々に不具合が発覚しているが、その修正がまともにできないのは、大手に人材がいないからだ。

“親元”への利益誘導は?

 そんな大手企業の「IT専門家」ばかりが入り込んだデジタル庁は大丈夫なのか。“本籍地”への利益誘導まがいのことが起きはしないか。

 霞が関OBはこう危惧する。

「公務員制度改革を本気で行い、民間と役所を行ったりきたりする人材の評価制度を改善すべきです。わずか数年で出身会社に戻ることを許せば、採用された省庁で出身会社へ利益を誘導することになりかねない。役所ではしばしば、前の役所に戻さないノーリターン・ルールなどを導入して専門家を育てます。民間人をノーリターンにしろとは言いませんが、10年間は出身会社に戻らせず、役所で雇用保障するなど、国の利益を第一に考える人材を集める仕組みが不可欠です」

「既得権」を守ることに必死な霞が関官僚は、そもそも「公務員制度改革」に反対、民間出身者も霞が関に骨を埋める覚悟はない。「利権官庁」となることが予見されるデジタル庁で、予算やポストを巡って激しい争奪戦が繰り広げられるのは必至だろう。

デイリー新潮取材班

2021年5月28日掲載

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