巨額の予算と利権の巣窟に不安…9月発足の「デジタル庁」に群がる“ITゼネコン”
情報システム関係予算が一元化
「デジタル庁設置法」や「デジタル社会形成基本法」など63にのぼる「デジタル改革関連法」が5月12日、参議院本会議で可決成立し、「デジタル庁」が9月の創設に向けて本格的に動き出した。しかし、デジタル庁が霞が関のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の司令塔になり、菅義偉首相が言うように「役所のたて割り打破」につながるのかというと、どうも心許ない。
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「これまで省庁ごとにバラバラだった情報システム関係予算が、デジタル庁に一元化されることになっており、巨大な利権官庁が生まれます。法案が通ったことで、利権を手放したくない各省庁の抵抗が始まるでしょう」
そう語るのは、内閣官房の情報通信技術総合戦略室、通称IT室の関係者だ。
「2019年度のIT関係予算は7000億円でした。それに対し、2020年度の補正予算と2021年度の予算を合わせた“15ヵ月”予算では、新型コロナウイルス対策や東京オリンピック・パラリンピック関連で巨額のIT投資に踏み出したことから、1.7兆円近くに膨れ上がったと、報じられています。さらに、新型コロナ対策として公共事業や雇用対策に内閣の判断で使える『経済緊急対応予備費』が1兆円も計上されました。新型コロナを理由に予算の大盤振る舞いが起きているのです。なかでも、IT投資は説明が付きやすいので、どんどん膨らむ傾向にあります」
120人の専門家が民間から
当然、潤沢な予算を狙って争奪戦が始まろうとしているのだが、その前にデジタル庁の概要を見ておこう。
デジタル庁は内閣直属の組織で、トップは首相が務める。もちろん首相が細かい運用にまで目を光らせるのは難しいため、業務を統括する担当閣僚の「デジタル大臣(仮称)」を置き、事務方トップには、事務次官級の「デジタル監」を設置することになっている。職員は500人規模で、このうち約120人は民間からシステムエンジニアなどのIT専門家を採用するという。内閣府の幹部官僚が説明する。
「最近になって新設された官庁には、消費者庁や復興庁がありますが、職員はいずれも主に霞が関の他省庁から寄せ集められた。今回のデジタル庁は早い段階から民間人を主要ポストに据える方針が出され、これまでの霞が関官庁とは違った組織になります」
もともと霞が関にはITの専門知識を持った官僚はほとんどいない。実際のところ、民間から採用せざるを得ない。それでも局長部長や課長などラインポストが減っているなかで、「いかに自分の役所の指定席を取るかが、事務次官らの仕事になっている」(前出幹部官僚)。
以前から、中央官庁に民間の専門家を登用すべきだ、という声はある。実際、公募による局長級ポストも生まれているが、任期を区切ったものが大半で、採用されてもいつまで経っても「お客さん扱い」されるばかりだ。入った民間人もそれが分かっているから、本気で改革しようとしない。「デジタル庁にはまとまった数の民間人が入るので、それでもカルチャーは変わると思う」と、幹部官僚は見る。
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