事件現場清掃人は見た 孤独死した「80代女性」が唯一心の拠り所にしていたモノとは?

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伊豆や箱根を転々

「女性が大家さんからの贈り物を断ったのは、お礼やお返しが面倒だったからでしょう。人とのコミュニケーションを完全に絶ち切って生きていたわけですからね、このマリア像は、彼女の唯一の心の拠り所だったと思いました」

 女性は20年以上このアパートに住み続けていたという。

「毎月の家賃は、亡くなるまで滞ったことは1度もなかったそうです。家賃は大家さんに直接手渡していたそうですが、その時大家さんはすぐに部屋に戻ろうとする女性を引き留めて、身の上話を聞いたことがあったといいます」

 大家の記憶によれば、

「10代で丁稚奉公に出され、女中として旅館に住み込みで働いていたそうです。結婚することもなく、長年伊豆や箱根の旅館を転々とし、定年になってからこのアパートに移り住んだということでした」

 清掃後、遺品の整理をしていると、現金が見つかったという。

「30万円ほどありました。通常、相続人がいなければ、遺産を国庫に納める手続きをします。しかしこの時、私は大家さんに『亡くなった女性は大家さんに迷惑をかけたくないと思ってお金を残していたのではないでしょうか。このお金は国庫に納めずに、大家さんが受け取るべきだと思います』と言ってお金を渡しました」

 現在、単独世帯数は全世帯数の27%。4世帯中1世帯がひとり暮らしという。「誰も偲ぶ人がいない」孤独死は今後も増える傾向にあるという。

デイリー新潮取材班

2021年5月28日掲載

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