米韓会談は成果ゼロどころかマイナス 日本との対応差にしか活路を見出せない文在寅の外交センスのなさ
手土産を2つ持参した大統領
5月22日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のバイデン大統領がホワイトハウスで初の首脳会談を行った。バイデン大統領が首脳会談を行うのは、日本の菅義偉首相に続きこれが2回目である。会談を終えた文大統領はさっそく自身のSNSに「最高の歴訪であり、最高の会談だった」「会談の結果は期待以上だった」などと会談の成功をアピールしたが、それを言葉通りに捉える関係者はそう多くはない。
文大統領は首脳会談に合わせ、半導体、バッテリー、バイオなど先端産業分野で約400億ドル(約4兆3600億円)にのぼる大規模な対米投資計画を発表した。これは米政府へのご機嫌取りに他ならない。
取材する記者によると、
「この“手土産”には2つの目的がありました。ひとつは会談で中国に対する強硬な立場を表明するのを自制してほしいということ、もうひとつはワクチン確保のためです。結果、会談では中国を過度に刺激する表現は出なかったので、それを踏まえると、多少なりとも大統領の手土産に効果はあったと思われます」
もうひとつのワクチンについてはどうだろうか。
21日時点で、韓国でワクチンを少なくとも1回接種した人は人口の7.3%にあたるおよそ377万人にとどまっており、日本と同様に世界に大いに後れをとっている。常に日本をライバル視する韓国にとって、何としてでもまず超えるべき壁は日本である。
文大統領は会談前に「今回の訪米で余剰ワクチンを米国からもらい、韓国がワクチン生産の国際的な拠点になるきっかけにしたい」と表明していた。菅首相が行ったように、訪米をきっかけにワクチンを確保したかった文大統領にとって、この米韓首脳会談にかける思いは並大抵のものではなかっただろう。
米国の方が一枚も二枚も上手
米韓首脳会談の開催が決まったのは4月16日で、その頃から、「朝鮮半島の完全な非核化や恒久的な平和定着の進展に向け両国間の緊密な協力策などを話し合う見通しだ」と、会談のテーマが報じられてきた。
実際、会談後の共同声明でも「朝鮮半島の完全な非核化という共通の目標と、北朝鮮の核・弾道ミサイル計画に対処する意志を強調した」と発表されている。
「表向きはそうですが、大統領の訪米の第一の目的は北朝鮮よりもワクチンの確保だったようにみえます。会談後に大統領が発信したSNSには、具体的成果としてワクチンに関する内容が冒頭に記されていました。就任から丸4年、従北姿勢を貫いてきた大統領が北朝鮮よりも先に別の事柄について触れるのは異例のこと。支持率が30%台に転落した今、リアリティのない北朝鮮との関係改善よりも、ワクチン確保を訴えた方が支持率低下に歯止めをかけられると踏んだのではないでしょうか」(先の記者)
会談を終えた文大統領は「米韓首脳会談はこの上なく良かった」と大成功であることを訴えたが、
「今回の会談で米国から得られたものは成果と呼ぶには値しない内容でしたし、大統領にとっても想定以下だったという見方が優勢です。具体的には、サムスンバイオロジクスがモデルナ社と数億回分のワクチン委託生産契約を締結したことと、在韓米軍に接触する韓国軍55万人に対するワクチン支援の約束のみであり、韓国側が切望していた国民へのワクチン確保には至りませんでした。4兆円を超える対米投資を勘案すると、会談の意味はなかったのではという厳しい意見もあります」(同)
今回確約を得たとされる2件についても具体的な日程や内容は未定であり、今後調整が必要だという。
「米国の方が一枚も二枚も上手で、韓国は手も足も出なかったという風に捉えています」
と話すのは別の記者だ。
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