「イベルメクチン」治験でも日本は後進国か ノーベル賞・大村教授が講演で有効性を解説
「できる防御はすべて」
日本では北里大学が昨年9月、イベルメクチンを新たな治療薬として国の承認を得るため、治験に乗り出したが、厚労省の「お墨付き」を得られるのはまだ随分先になりそうだ。前出の八木澤氏が強調する。
「糖尿病やアルツハイマーなど周知の疾患に対する新規医薬品の審査には、長い時間がかかったとしても規制当局の先例に異論を唱える者は少ないだろうが、現在の世界的なパンデミックにおいて、そのような旧態依然とした審査方法では、有効で安全な治療薬の迅速な提供は難しい」
つまりWHOや米当局が主張する「科学的根拠」は、新型コロナの感染拡大という緊急事態にそぐわないというのだ。従来通りの「悠長」なやり方でいいのかと。
医療の現場に立つ医師からは現実的な声も聞かれる。ストレスケア日比谷クリニックの酒井和夫院長(69)は、自身でイベルメクチンを服用している。
「安全だし、効用については大いに期待している。日々、50人以上の患者と接しているので、できる防御はすべてしないといけない。ですが、手持ちのイベルメクチンはもう使い切り、問屋に問い合わせても『出荷調整中』と言われ、手に入りません」
菅義偉首相は2月半ばの衆院予算委員会で、医師である立憲民主党の中島克仁議員から早期の承認を提言された際、「日本にとって極めて重要な治療薬と思っているので、最大限の努力をします」と前向きに答えた。
全国民がワクチンを接種し終える時期は分かっていない。接種を受け付ける自治体は電話がパンクし、変異株の全国的な広がりに伴い、各地で医療崩壊が深刻化。特に大阪では死者数が急増してその数は東京を上回り、緊急事態宣言に対する国民の忍耐力も、昨年よりは遥かに落ちている。
それでも尚、治療薬を承認するための「エビデンス」や「前例」はどこまで重視されるべきなのか。目の前で起きている現実を直視し、天秤に掛けるという「最大限の努力」もそろそろ求められる時期にきているのではないだろうか。
「賛成派」と「反対派」がせめぎ合い、「たかがひとつの薬」をめぐって停滞する社会。この状況こそが、「ワクチン後進国」と化した日本の脆弱性を映し出しているのかもしれない。
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