阪神「佐藤輝明」は5打席目で…「プロ初安打がホームラン」は持っている男の証明か?

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“努力家3羽ツバメ”

 今度は「プロ初打席で本塁打を放った選手」を振り返ってみよう。香川伸行(南海)に代表されるように、「プロ初打席初本塁打を記録した選手は大成しない」のジンクスもあるが、その一方で、通算2000本安打以上を達成した者もいる。高木守道(中日)、駒田徳広(巨人→横浜)、そして、稲葉篤紀(ヤクルト→日本ハム)である。

 その中で、大学時代の華々しい本塁打がきっかけで、プロへの道を切り拓いたのが稲葉だ。

 法大4年時の1994年春の明大戦で、稲葉は2試合連続弾を放つが、たまたま観戦していたヤクルト・野村克也監督が「何かの縁を感じた」と獲得リストに加え、同年のドラフトで3位指名した。

 入団後、一塁手だった稲葉は、未経験の外野手に挑戦するという困難な試練をクリア。イースタンで打率.366、9本塁打の好成績を残すと、1軍に昇格したばかりの95年6月21日の広島戦で、2回に初打席初安打となる右中間先制2ランを放った。

 一層縁の強さを感じた野村監督は、「努力をするヤツは報われるんや」と稲葉を信頼し、真中満、宮本慎也とともに“努力家3羽ツバメ”と評している。

 ヤクルトといえば、2019年に高卒2年目以内では史上最多の36本塁打を記録して新人王に輝いた村上宗隆は、プロ初打席の18年9月16日の広島戦で、史上64人目の初打席本塁打を記録している。

 村上は九州学院時代の15年夏の熊本県大会初戦でも、1年生の4番として公式戦デビューをはたした1回の初打席でバックスクリーンに特大の先制満塁弾を放っており、高校、プロのいずれもあっと驚く鮮烈デビューだった。

「そういう星の下に生まれた」と言うよりも、やはり、それまでの努力の結果であり、単なるラッキーボーイで終わるか、さらに飛躍して大成を収めるかも、その後の野球に対する取り組み方にかかっていると言えるだろう。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年5月24日掲載

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