糖尿病患者にとって便利な「台湾製アプリ」 日本で普及しないのはなぜなのか
国民の多くが無縁ではいられない病気
糖尿病を患う人が増えている。厚生労働省の2017年の「患者調査」によると、病院に入院または通院している糖尿病患者数は328万9000人で、前回調査(2014年)から12万3000人増えて過去最多となった。2008年調査の237万1000人から3回連続で増加、9年で91万人増え、なんと1.4倍に急増していることになる。
厚労省が2020年12月に公表した別の調査「国民健康・栄養調査」では、2019年時点で「糖尿病が強く疑われる人」は調査対象の男性の19.7%、女性の10.8%に達した。60歳代の男性では25.3%、70歳以上だと26.4%と4人に1人がこれに相当する。もはや糖尿病は国民の多くが無縁ではいられない病気になりつつあるのだ。
私たちはどう糖尿病に向き合えばいいのか。高田中央病院(横浜市)院長で、糖尿病専門医の荏原太(えばら・ふとし)医師に聞いた。
食生活の「認識」が第一歩
――糖尿病の人が驚くほどの勢いで増加しています。
荏原 生活習慣によって引き起こされる2型糖尿病は、食生活の変化が大きく影響しているのは明らかです。ですから、糖尿病を抑えようと思えば、私たちの食事を見直すしかありません。「ひいお爺さん、ひいお婆さんの時代の食生活に戻すことができれば、糖尿病は抑えられる」と、私はよく言っています。
――食生活の大きな変化が糖尿病の増加に直結しているということですね。
荏原 米国では巨大食品企業や外食産業が、手軽な食事を次々と提供してきたことで、知らず知らずの間に摂取する砂糖と塩、脂肪の量が増加しました。米国で小児糖尿病が急速に増えているのも、食生活の変化が間違いなく背景にあります。日本でも、沖縄のある町にコンビニができたのをきっかけに、その地域の子どもたちに肥満や糖質異常が増えたという報告があります。コンビニが悪いわけではないのですが、子どもたちの食生活を激変させたということでしょう。
――糖尿病の治療に必要なことは。
荏原 2型糖尿病を含めた生活習慣病に対しては、医師も患者も薬で何とかしようと新薬を含む開発など研究が進んでいます。しかし、基本は食事を含む生活習慣を変えることこそが重要なのですが、医師も来院時に食事や運動指導をするのが精一杯で、毎日の生活習慣や食事内容を把握し、日々アドバイスするような生活習慣に寄り添う治療は、理想だと分かりながらも、なかなかできませんでした。
――糖尿病患者が食生活を変えるには、何が重要なのでしょうか。
荏原 何よりも自分自身の食生活を「認識」することが第一歩です。何を食べると血糖値が上がるのか、どういう食生活が病気の改善に役立つのかを、患者さん自身が知ることです。もちろん治療には薬も使いますが、悪化させないためには、生活を見直すことがもっとも重要です。しかし、これは簡単なことではありません。生活習慣病になる人は、生活習慣を見直せないからこそ病気になっているのです。
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