「東京スカイツリー」が10年目に突入 2つの新たな“仕掛け”で集客力に期待
“日本の新たなシンボル”との呼び声高く東京スカイツリーが開業したのは2012年5月22日のこと。昨今はコロナ禍による観光客減に苦戦する、10年目を迎えたツリーの今を取材した。
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東京タワーに代わる電波塔として、墨田区押上でスカイツリーの着工がはじまったのは08年。およそ3年半を経て完成した高さ「634m」は、10年前も今も世界一の高さのタワーである。
開業当時は高い注目を集めた。開業から50日間は、展望台に上るためのチケットは抽選制。2万3000あった枠に14万件の申し込みがあり、開業当日の正午枠は実に335倍の倍率になった。
運営元である東武鉄道は、初年度のタワーの入場者数を400万人と見積もっていた。ところが実際には、これを150万人以上も上回る554万人がツリーに押し寄せた。水面に映る“逆さツリー”が見られる「十間橋」も人気を博し、1日に300人以上が集まり、写真撮影待ちの行列をつくった。
しかし、こうした開業バブルは長くは続かなかった。
「翌13年度のタワー来場者数は619万人でした。前年度より増えはしたものの、これは東武鉄道の事前予想を25万人も下回る結果でした。高層ゆえに天候に左右されやすく、展望台がたびたび営業休止になったためでした。さらに14年度は531万人と、3年目にして入場者は前年割れとなりました」(経済誌ライター)
以降、入場者数は微減がつづき、新型コロナのため臨時休業が実施された19年度の来場者は360万人と400万人を割った。5月14日に発表された20年度の来場者数は、78万人。緊急事態宣言が出された今現在も、タワーは営業休止を余儀なくされている。
コロナの悪影響は、ツリー周辺の飲食店にも及ぶ。本来は観光客でにぎわうはずの休日昼に訪れると、ツリーの前を走る浅草通りにはシャッターが目立った。
「去年の2月頃は、お客さんが減っちゃって地獄だったよ」
とは「そば処 かみむら」のご主人だ。大きな海老天が3本のった「タワー丼」を出す店として、たびたびメディアにも取り上げられてきた。
「外国からのお客さんが増えたのは、ツリー開業の4年目から。台湾のユーチューバーにも紹介されて、コロナ前の土日は注文がひっきりなしだった。でも今は、ご覧のとおり観光客は減った。店を開けていなくても給付金はもらえるから、閉めているところは多いね。でもうちはやってる。だって今、本当に辛いのは問屋さんだよ。割りばし屋さんにしても、そば粉屋さんにしても、飲食店がやってないから苦しいの。だから問屋さんのためにも、お店を開けている。うちはここで50年やっているから、地元のお客さんにも助けられている。でも、観光客だけを相手にしてきたお店は、厳しいだろうね」
お膝元の店からは東武鉄道に対し、“休業せずにスカイツリーは営業すべし”という声もあるというが、
「それはまた違うよ。これまでスカイツリーに助けてもらっているんだから、こういう時は協力しなくちゃ」
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