空手「植草歩」の師範告発に調査委が“暴力なし”の結論 報告書から見えてきた真実
“不適切”な練習
【1】棒術を受ける形を指導する際に、竹刀を棒に見立てて、竹刀を用いる練習
【2】蹴りの高さや突きの高さを示す際に、竹刀を横にしてバーとして用いる指導
【3】竹刀をゆっくり振るい、蹴りや突きの軌道を説明する指導
最初の報道を目にし、香川師範が部員を威圧するために竹刀を持っていたと思い込んだ方も少なくなかったのではないだろうか。だが「竹刀を使う練習」にはこれだけのバリエーションがあり、それぞれに合理性があったことには驚かされる。
一方、複数の委員から問題点が指摘されるなどして統一見解が得られず、「ベストプラクティスではなかった」と結論づけられた練習もあった。ご紹介しよう。
【練習Ⅰ】
竹刀を突きに見立て、静止固定した竹刀を跳ね上げる指導
【委員の見解】
「さほど危険性を感じない」(弁護士3人、医師、帝京大監事、同大局長) 「顔面の前、至近距離で竹刀の剣先があるのは危険」(相撲連盟評議員、レスリング経験者の医師)
部員は納得
【練習Ⅱ】
セクハラ防止の観点からも、身体の部位を意識させたり、身体の部位を触れて指し示すため、竹刀を指示棒として用いる指導
【委員の見解】
「危険性を感じない」(弁護士3人、医師、帝京大監事、同大局長) 「剣先で身体を突っつく行為は危険であるが、許容範囲内」(レスリング経験者の医師) 「剣先で身体を突っつく行為は危険」(日本相撲連盟評議員)
更に委員会は、竹刀で壁を叩くことにも検討を加えている。《香川師範は、当部の部活動において、竹刀を持って道場内を歩いて回ったり、竹刀で壁をバンと叩いていたことが時々あった》と指摘。《部員の気合いが足りない時》などに叩くことで、モチベーションを上げることが目的だったという。
竹刀で壁を叩く──いかにも鬼監督という光景を連想してしまう。ところがヒアリングを行ってみると、大半の部員が理解を示したのだ。
《「とても気合いが入る」(3年生・男性)》、《「だいたい1回バーンって叩く。そしたら気合い入る」(4年生・女性》、《「モチベーションを上げていくために竹刀で壁を叩いていた」(4年生・男性》
“壁ドン”はダメ
こうした回答が多数だったようで、報告書には以下のような記載がある。
《当部部員らにおいては、幼少時・従前からの他道場での指導経験等も踏まえて、竹刀で壁をバンと叩くことにつき、当然のことと受け止めたり、肯定的に受け止めているようである》
部員が納得していればいいではないかとも思うのだが、やはり“法令遵守”を金科玉条とする今の社会では、そうもいかないようだ。
《現在の一般社会常識の観点、特に空手界以外の一般人からの目線からすると、部活動の指導者が竹刀で壁をバンと叩く行為は、たとえ目的は正当なものであったとしても、その行為自体を客観的に見ると威圧的・威嚇的な行為であると評価される》
《昭和時代や平成前期における状況下においては、これとは別異の考え方が大学部活動や世論において支配的であったとしても、部活動におけるコンプライアンスが尊ばれ、体罰の禁止が絶対(学校教育法第11条)とされる令和の時代の現在の大学部活動における指導としては、香川師範の竹刀で壁を叩く指導は体罰行為には当たらないものの、その程度・頻度・態様如何によっては社会通念上許容される範囲を超え、威圧的・威嚇的行動としてパワーハラスメントに該当する可能性があり、適切な指導とは言い難い》
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