空手「植草歩」の師範告発に調査委が“暴力なし”の結論 報告書から見えてきた真実
「竹刀」の使用法
空手女子組手61キロ超級で東京五輪に出場予定の植草歩選手(28)=JAL=が、パワハラなどを訴えていた問題で、帝京大は5月10日、内部調査委員会の報告書を公表した。
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植草選手は帝京大出身で、同大で師範を務める全日本空手道連盟(全空連)の香川政夫・前選手強化委員長(65)の“愛弟子”だった。香川師範も“名監督”としても知られており、五輪代表としての練習も大学内の道場で行われていた。
3月、植草選手は香川師範によるパワハラや暴力行為を訴え、多くのメディアが報じた。ここではスポーツ報知の記事をご紹介しよう。25日の紙面に「空手 植草歩がパワハラ訴え 香川強化委員長から竹刀で顔突かれる」の記事が掲載された。重要な部分を引用させていただく。
《関係者によると、昨年末から選手の顔面を香川氏が竹刀で突く行為が、練習として行われていた。植草は練習中止を求めるなどしたが、逆に叱責(しっせき)されたという。植草は目の打撲などのけがを負い、他にも五輪代表など複数選手が目などを負傷した》
竹刀で顔面を突くというイメージは強烈だ。新聞もテレビも大きく報じたのをご記憶の方も多いだろう。本来的には全空連と植草選手の問題なのだが、帝京大は事態を重視。植草選手が卒業生であり、現在も同大の空手部で練習を続けていること、香川氏が空手部の師範・監督であることなどを踏まえ、4月1日に内部調査委員会を発足させた。
委員会は弁護士3人、医師2人、日本相撲連盟評議員、帝京大の監事と企画・管理局長の計8人で構成された。植草選手や香川師範を筆頭に計91人にヒアリングを行ったという。
竹刀のプレゼント
その結果をスポーツ報知(電子版)は5月11日、「空手・植草歩への『暴力なし』と帝京大内部調査委 香川政夫氏『満足』近く指導復帰へ」と報じた。調査委はパワハラについては言及を避けたが、《選手の顔面を香川氏が竹刀で突く行為》は確認できなかったと結論づけたのだ。
帝京大は公式サイトで、報告書を公開している。一体、どんな調査内容であり、どんな真実が明らかになったのか、詳しく見ていきたい。
委員会はまず、香川師範の竹刀を用いた指導法が適切なものだったかを調査した。ちなみに香川師範が空手部部員だった1976年頃、竹刀を用いた指導・練習は普通に行われていたという。
興味深いことに、香川師範が使用していた竹刀は、2014年3月に卒業した部員一同から《これまでの感謝の気持ちから》プレゼントされたものという。ちなみに、この竹刀は《3月上旬以降、使用が停止》されているそうだ。
委員会は香川師範がどのように竹刀を練習で使っていたのかを調べ、その是非を明らかにした。まず、《不適切でない》と認定されたものからご紹介しよう。全部で8つあるのだが、そのうちの3つを以下に列挙する。
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