「東芝」車谷前社長追放劇の続編は「解体ショー」 “物言う株主”との対立関係はなおも続いたまま

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アクティビストとの対立関係

 4月、「東芝」の車谷暢昭(くるまたにのぶあき)前社長が部下たちに経営者失格の烙印を押されて辞任した。後任には綱川智(さとし)会長が復帰したが、株主に名を連ねる外資系ファンドや“物言う株主”との関係修復や、6月下旬の株主総会対策といった課題が高い壁となり、そびえ立っている。

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 車谷前社長に経営者失格を突きつけたのは、社内の「アンケート制度」。部長職以上が対象で、経営トップの信任調査のための制度である。今年はじめ、120名に対してアンケートが実施され、2割超が「×」をつけた。さらにその1カ月後、執行役や事業部長クラスの30人弱に絞り込んで再度実施すると、「×」は5割を上回った。

 問題視されたのは、ゴルフ会員権を会社に購入させて特定の仲間とだけプレーしたり、各地への視察に夫人を同伴させるといった公私混同。むろん本業における「×」の理由も深刻だ。

 米原子力会社買収失敗で1兆円をドブに捨て、2017年、上場維持のために6000億円の増資を実施したが、「株主に名を連ねるようになったのは、60社もの外資系ファンド。うち2割を占める“物言う株主”のアクティビストから、車谷さんはコーポレートガバナンスの欠如を問われ、対立関係に陥ったことも経営者失格とされた理由です」(M&Aアナリスト)

唯一の虎の子

 アクティビストとの関係修復は後任の綱川社長の至上命題である。その綱川社長は16年から20年にかけての前回社長時代、切り売りによって財務体質を改善した経験を持つ。東芝メディカルシステムズを6655億円でキヤノンに譲渡。半導体部門を東芝メモリHD(ホールディングス)(現・キオクシアHD)として切り離し、ほぼ半分の株式を2兆円で売り払っている。

 今夏、キオクシアはあらためての上場を目指す。時価総額は東芝に匹敵する2兆円超だ。成長力の乏しい事業しか残っていない東芝にとって40.6%を所有するキオクシア株式は“虎の子”。だがその株式売却で得られた資金も、アクティビストに吸い取られる見込みという。

 綱川社長が再登板で歩むのは、難題だらけのいばらの道。まずは、6月末に控える株主総会にどう挑むかが注目される。

週刊新潮」2021年5月20日号「MONEY」欄の有料版では、新旧社長と株主の関係や東芝が「解体ショー」に至る可能性を詳報する。

週刊新潮 2021年5月20日号掲載

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