消えた「コカ・コーラ クリア」 3年前の「透明飲料ブーム」はなんだったのか

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 関東は今年初の真夏日を迎えた。間もなく夏である。冷たいドリンクを飲む機会も増えそうだが、そこで思い出されるのは3年前の夏のブーム。猫も杓子も「透明」になっていたあの現象は、なんだったのか――。

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 3年前に、飲料業界に突如として湧いた透明ブーム。当時の“透明飲料市場”は約900億円規模だったと伝えられる。なかでも18年6月11日に出た「コカ・コーラ クリア」はブームを象徴する存在で、発売は大々的に報じられた。おなじみのコカ・コーラからカラメルを抜いたことで透明を実現し、しかもカロリーゼロというふれこみ。発売から3カ月間で1000万人が飲んだという。

 翌19年には後発商品となる「コカ・コーラ クリアライム」が夏季限定で発売されてもいる。だが20年には同様の透明商品は販売されず、今年21年も、日本コカ・コーラ社から類似商品が販売されるというアナウンスはない。

 3年前には“透明カフェラテ”に“透明抹茶”、“透明紅茶”商品もあった(それぞれ「アサヒ クリアラテ from おいしい水」「アサヒ クリアラテ抹茶 from おいしい水」「サントリー天然水 PREMIUM MORNING TEA」シリーズ)。はては透明ノンアルコールビールである「オールフリー オールタイム」も売られたが、いずれも現在は終売のようだ。

90年代にもあった「透明コーラ」

“一見するとただの水のように見えるから、オフィスなどでも飲みやすい”とも分析されていた透明飲料人気。じつは「デイリー新潮」でも3年前に、透明飲料水について記事にしている。この時に解説してくれた清涼飲料水評論家の清水りょうこ氏に改めて話を聞くと、「正直言うと、3年前も透明飲料が定着するとは思っていませんでした」と振り返る。

「そもそも透明コーラも、3年前にはじめて販売された商品ではありません。例えば90年代には『タブクリア』という透明コーラがコカ・コーラから発売されています。が、これもやっぱり定着しなかった。一時的に盛り上がって注目をあつめ、やがて関心を失われるというブームの波は、清涼飲料水にもあるんです」

 90年代には他にも透明ペプシが販売されていたという情報があり、80年代にさかのぼれば森永製菓から「ミラクルアルファ ホワイトコーラ」なる透明コーラが出ていたようだ。

「いまならクラフトコーラをはじめとした、いわゆる“コンク系”と呼ばれる、シロップタイプを薄めて飲む清涼飲料が、業界で流行りつつありますね。数年前から続くクラフト系コーヒーの流れなのかもしれませんが、これも定着するかどうかは未知数です。新しいもの好きの国民性なのか、日本はとくに清涼飲料水の新商品が多いのです。毎年1000近い商品が発売されては消えてゆきます。透明飲料も、そうした運命をたどったということでしょう」(同)

 流通アナリストの渡辺広明氏はこんな意見だ。

「売場スペースの事情もあるでしょう。たとえばコンビニエンスストアのソフトドリンク売場に置ける商品数は、90~120点。定番商品と変わりダネの『透明』をずっと置いておく余裕はなく、となれば定番品のほうが優先される。他メーカーはもちろんのこと、自社製品でも『定番』と『透明』で棚の奪い合いが起きており、『透明』が破れたというわけです」

 さらには昨年から続くコロナの影響も指摘する。

「“透明コカ・コーラ”は一昨年までは売られていたとのことですが、ある飲料メーカーの方は『コロナ禍では味が濃いもの、がっつり甘い商品が売れる。同時に、さっぱりした無糖系商品も売れている。濃いかさっぱりかの二極化が進んでいるんです』といいます。その中間ともいえる透明飲料、つまりフレーバーウォーター系は、今の人々の嗜好にそぐわないのかも。“人目を気にせず飲める”という透明飲料のメリットも、在宅ワークが進むご時世では活きませんしね」

デイリー新潮取材班

2021年5月20日掲載

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