春ドラマでも「芸人役者」は活躍中 捜査一課長「塙宣之」は“ヘタウマ”で評価上昇中

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「放送事故」の演技

 塙が散々“演技論”を披露し、相方の土屋伸之(42)が閉口する。耐えかねた土屋が「はっきり言うよ、土屋さん棒読みなんだよ」と指摘すると、塙は「棒読みか」と呟く。すると突然、「警視庁・捜査一課長」のサントラが流れ、塙は次のように独白する。

《確かに、俺の演技はひどいと、ネットで叩かれた。『流れるような棒読み』、『表情筋が殉職している』。棒読みが2回続いた時には『棒々鶏(バンバンジー)』と書かれていた。にっこり笑ったつもりだったが目が死んでいて、次回の真犯人と間違えられたこともある。悔しくて近藤芳正さん(59)がやっているワークショップにも通った。しかし何も変わらなかった。ただ俺と同じように誹謗中傷に耐えかねて辞めていった芸能人はたくさんいるはずだ。我々はそういった被害者の無念を晴らすため、必ず、舞台に、上がる!》

 すかさず土屋が「うるせえな!」とツッコむと会場は爆笑、拍手喝采の客もいた。観客が喜ぶのも無理はない。何しろ塙の棒演技は「放送事故レベル」と揶揄されてきた。

 独演会のように自虐ネタを披露することも少なくなかった。「友人が自分の演技を見て、『下手すぎて内容が頭に入ってこない』と言われた」というエピソードを披露したこともあった。

「ご本人が指摘した通り、棒読みだけでなく、あまりに表情が硬いので感情表現ができていなかったんですね。率直に言って、周りの役者さんに迷惑をかけるレベルでした。斉藤由貴さんがイジったのも無理はありません」(前出の民放キー局の関係者)

ヘタウマの魅力?

 ところが、である。このキー局の関係者は「それでも最近、塙さんの演技はかなり上手になったと思います」と意外な指摘なのだ。

「確かに役者として見れば、まだまだ下手です。とはいえ、デビュー時の棒演技を知っている視聴者なら、『最近は役になじんできている』と好意的に見ているのではないでしょうか。スタッフも分かっているようで、最近は塙さんのセリフの数や、他の役者さんと絡む場面が増えています」

 欠点を着実に修正していることが、演技の上達につながっているようだ。今年の2月には、やはりフジ月9の「監察医 朝顔」にも出演を果たした。

「今ではセリフ回しに情感がこもるようになり、表情で芝居ができつつあります。共演者の演技に絡んでも、シーンに溶け込めるようになってきました。もちろん『上手い!』と評価されるような演技ではありません。いわばヘタウマとでも言えるような、塙さんなりの演技がハマってきた感じです」(同・関係者)

 ちなみに先の「棒君ハナワ」では、「俺たち役者に上手い下手とかいうのはないの」と熱く語り、土屋が「俺たち役者にって言っちゃったよ」と呆れながらツッコむ場面がある。

 塙によると「上手い役者はごまんといるが、それは逆に印象に残らない。あえて平坦に読むことによって味を出す」のだそうだ。

 もちろん漫才のネタとして喋っている。とはいえ、プロの制作者からも「ヘタウマ」として評価されるようになってきたとなると、意外に「当たらずといえども遠からず」ということになるのかもしれない。

デイリー新潮取材班

2021年5月20日掲載

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