パワハラで解任された北大前総長 裁判で明らかとなった北大の嘘、告発文書は無かった
昨年6月30日、名和豊春氏(67)は文科省から北海道大学の総長を解任された。それに対し、12月10日、北大と国を相手取り、解任の取り消しと損害賠償約(1460万円)を求めて札幌地裁に提訴。同時に、北大がパワハラの告発文書を不開示とした処分の取り消しを求める行政訴訟も起こしていたが、4月9日、第2回弁論で北大側がパワハラに関する文書はなかったと認めたのだ。では、名和氏はなぜ解任されたのか。
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名和氏が総長を解任された経緯を、改めて振り返ってみよう。
発端は2018年9月29日、総長選考会議の石山喬議長と横山清副議長が北大の顧問弁護士を伴ってアポなしで名和総長(当時)と面談したことだった。
この時、顧問弁護士は、名和総長に対してこう発言している。
「先生には高潔な人物であったと信じていましたが、見損ないました。私は今ある人物が先生を公益通報(内部告発)で訴えるのを阻止していますが、10月13日までしか待てません。直ぐに、総長をお辞め下さい」
非違行為の内部告発
総長に非違行為(横暴や違法行為)がある旨の内部告発があったというのだ。むろん、名和氏にとっては寝耳に水の辞任要求だった。当の名和氏はこう言う。
「顧問弁護士は、公益通報されたという非違行為の具体的内容を明らかにしませんでした。石山議長や横山副議長は、私に非違行為の真偽を確かめることなく、『録音テープがある。総長選のやり直しをしなければならない』と言い、私に辞任を求めたのです。驚くしかありませんでした」
名和氏は1980年、北大大学院工学研究科建築工学専攻修士課程修了し、秩父セメントに入社。97年北大大学院工学研究科助教授、2004年同研究科教授などを経て17年4月に北大総長に就任していた。
名和氏にパワハラの嫌疑をかけた総長選考会議は2018年11月、学内に調査委員会を設置する。19年7月、総長選考会議が名和氏のパワハラを認定、文科省に解任を申し出る。そして20年6月、文科省が名和総長を解任した。
週刊新潮(20年7月23日号)は、名和総長の解任について報じている。以下はその抜粋である。
《「私にかけられた疑いは28件にも及びます。しかし、どれも事実無根です」
(中略)彼の手元にあるリストから抜粋すると、それは、
〇ある部長の業務報告について、「今やらなければいけない業務を放棄している」と威圧的な言動を行った。
〇別の部長の報告に対して激高し、「何を考えているのか」「メモを取るな」と威圧的な態度を取った。
〇北大で使用する電気の供給業者について、ある社が落札したにもかかわらず、合理的理由もなく「取り消せ」と指示した。
といったもの。
しかし、名和氏は言う。
「実際の会話のほんの一部分を切り取っているか、文脈が捻じ曲げられているものばかり。例えば、電力会社の件は、経緯や落札した会社の能力が不明だったので指示しただけです」
加えて、
「調査委員会は当事者の自分に弁明の機会を与えず、『パワハラ』を認定した。後に調査委員会が関係者に聞き取りしたメモも見ましたが、誘導や誤導質問ばかり。調査の体を成していないのに呆れました」》
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