応援旗のせいで新庄剛志の本塁打が幻に…観客によるあり得ない「妨害事件史」

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「あれがなければ……」

 応援旗や捕球による妨害は偶発的なものと解釈できるが、故意と思われる妨害行為で本塁打を1本損したのが、巨人時代のアレックス・ラミレスだ。

 08年5月7日の阪神戦、2点を追う巨人は7回1死一、二塁で4番・ラミレスが能見篤史から左翼席最前列目がけて低いライナーを放った。起死回生の逆転3ランと思われた直後、黒いヘルメットと黄色い法被を身に着けた阪神ファンの男性が身を乗り出しながら右手を伸ばし、打球を叩き落としてしまう。打球はフェンス最上部に当たったあと、グラウンドに落下した。

 審判団は協議の末、「観客が打球の邪魔をしたことにより、二塁打で試合を再開する」と宣告。原辰徳監督が抗議したが、「客の手に当たらなければ、フェンスを越えたかどうかの判断。越えていないと判断した。フェンスの前に乗り出していたので」(真鍋勝己三塁塁審)という理由で却下された。1死二、三塁で試合再開後、巨人は同点に追いついたが、8回に勝ち越され、4対5で敗れた。

 冒頭で紹介した角中の落球シーンも、ファウルの判定がリクエストでアウトに覆ったことからもわかるように、VTR導入以前は、納得がいかない判定でも泣き寝入りするしかなかった。

 また、1996年4月25日の横浜vs阪神では、5回に阪神のグレン・デービスが左飛を打ち上げた直後、左翼席のファンが佐伯貴弘に捕球させまいとカップラーメンやメガホンを投げつけたため、激怒した佐伯を大矢明彦監督がなだめに駆けつける騒ぎに発展。試合再開後、それまでパーフェクトに抑えていた三浦大輔が四球を許したため、佐伯は「あれがなければ……」と悔やみに悔やんだ。

 故意であろうとなかろうと、妨害行為は試合の興趣を削ぐばかりでなく、勝敗や記録にも影響を及ぼすので、観戦する側も“フェアプレー”で臨みたいものだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年5月19日掲載

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