万引き癖が悪化した末に……母親が5歳の息子をマンション13階から落とした理由
日本の殺人事件の半数が、親族間で起きていることをご存知だろうか。年間の殺人事件は800~900件台。そのうち親族間殺人は400~500件台に上るという。ノンフィクション作家の石井光太氏は5月18日、親族間の殺人事件を扱った『近親殺人―そばにいたから』(新潮社)を出版した。
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日本では、1954年の3081件をピークに殺人事件は減少しており、2013年に初めて1000件を下回り、その後は800~900件台で推移している。ところが親族間殺人事件は、ここ30年ほど400~500件台で、やや増加傾向にあるという。なぜか。
「高齢化が進んだことで、老老介護殺人が増えてきました。また、精神疾患が急増してきたことで、それに伴う殺人事件が増えているからです」
と語るのは、石井氏。
「近親殺人は、刑罰は一般の金銭などを狙った殺人事件などより軽くなる場合が多いんです。殺人に至るまで家族が追い詰められているケースが多く、情状酌量の余地があるからです」
いくつかの異常な言動
石井氏は『近親殺人―』で7つの事件を取り上げている。いずれも傍聴し現場に足を運んで取材したものだが、そのうちの1つをご紹介する。2014年末、母親が息子を殺してしまった事件だ。
東京・隅田川に近い13階建てマンションの最上階で、会社経営者の小佐野晴彦(仮名・以下同・事件当時57)は妻の恋(同・34)、息子の瑞貴(同・5)と暮らしていた。
「2007年、晴彦と恋は携帯サイトで知り合いました。晴彦は23歳年下の恋にぞっこんだったそうです。ほどなく2人は晴彦が当時住んでいたマンションで同棲します」
ところが、恋には異常な言動がいくつか見られた。そのひとつが万引き癖である。ストレスが溜まると、スーパーに買い物に行った際、棚の商品をバックに入れて持って帰ってきてしまうのだ。盗んだ品の中には、恋にとって不要のものも含まれていた。
「加えて、彼女は平然と嘘をつくこともあったそうです。恋には2回の離婚歴があり、2番目の夫との間には子どももいた。晴彦がその子のことを聞くと、彼女は収入もないのに、『元夫は働かないので、私がお金を稼いで(養育費を)渡している』と嘘をついたそうです」
2009年5月、恋は瑞貴を出産。その翌月に2人は入籍し、1年後に13階建て新築マンションの最上階に新居を構えた。
「恋は、出産前から子どもは嫌いだと話していたが、晴彦は子どもができたらかわいがるはずと思っていました。しかし、彼の思いは見事に外れた。恋は子育ても家事も一切放棄したのです」
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