水際対策「14日間自主隔離」の抜け穴 “スマホ2台使い”で外出した「違反者」の告白

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 新型コロナウイルスの変異株流行で喫緊の課題とされるのが、入国者への“水際対策”である。だが、帰国時に誓約した「14日間の自主隔離」を違反する帰国者が後を絶たない。違反者に話を聞いてみると、“ザル”と指摘せざるを得ない自主隔離の実態が浮かび上がってきた。

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1日300人の違反者

「帰国時、いくつもアプリを入れさせられましたが、自主隔離期間中に、ある“ワザ”を使って切り抜けることに気づいたんです。最後の方の数日は外出し、会社にも行きました」

 こう打ち明けるのは、今春、アメリカ旅行に出かけて帰国した会社員の男性である。

 現在、海外から帰国する人は、自宅やホテルなど自ら申告する待機場所での「14日間の自主隔離」が義務付けられている。帰国時に空港で受けるPCR検査が陰性だったとしてもだ。潜伏期間などが原因で陰性が出てしまい、帰国後数日経ってから発症するケースがあるからだ。

 5月13日の新聞報道によれば、約2万人いる自主隔離中の帰国者の中で、1日約300人もの違反者がいるとのこと。だが、実際はそんな数字では済まされない可能性がある。事実、この男性は、制度の“抜け穴”を見つけ、バレずに外出していたというのだ。

「ベガスで休暇か。グッドラック!」

 男性の趣味は、休みに海外旅行に出かけること。長期化するコロナ生活の中、いつ海外旅行が解禁になるか待ち遠しい思いで過ごしてきたという。

「暇さえあれば、SNSなどで情報収集しておりました。すると、今年に入ったあたりから、いろいろな人が観光目的でアメリカに行っていることがわかったんです。ハワイ州は昨年から、日本からの陰性証明書を持参すれば隔離が免除されていると知られていましたが、アメリカ本土も簡単に入国できるとわかった」

 現在、アメリカは日本からの渡航者に対する行動制限措置を課していない。米疾病予防管理センター(CDC)によれば、「ワクチン未接種者は、旅行後3~5日以内に検査を受けるとともに、旅行後丸7日間は自宅待機する」ことを“推奨”するのみ。あまり知られていないが、実はアメリカ本土も一定の条件さえクリアできれば、隔離なく入国できる地域なのだ。

「飛行機搭乗の72時間前までに、日本で陰性証明書を取得すればOKです。都内のクリニックに行くと1万5000円くらいで検査できました。とはいえ、アメリカでの入国審査の際はドキドキしました。所詮はネットでかき集めた情報なので、追い返されたりするんじゃないかと。けど、審査官の態度は拍子抜けするもので、私が差し出した陰性証明書に目もくれず、『ベガスで休暇なんて羨ましいなぁ。グッドラック!』と軽口を叩きながら通してくれた」

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